「沖縄が復帰をして50年ということで、多分、それに合わせてNHKの朝ドラ「ちむどんどん」が始まったのですね」
「私は朝ドラは見ないのですが、その「ちむ……」何とかというのは、どういう意味なの?」
「沖縄の方言で、胸が高鳴るという意味だそうです。今、ちょうどドラマも日本に復帰した年の1972年という設定です。主人公の暢子(のぶこ)が沖縄から上京して料理人になるという、一種のサクセスストーリーだと思って見ているんですけど」
「政治的な描写はあるのですか?」
「中立がモットーのNHKですからね。全くと言って良いほどありません。今までも、復帰前の沖縄の様子が淡々と写し込まれていたと思います」
「返還された時の様子はどうでしたか?」
「ちょうどその日は、暢子が故郷のやんばる村から東京に向かって旅立つ日という設定になってましたね」
「成る程、重ねた訳ですね」
「沖縄復帰50年の式典の様子を流していましたが、どことはなく重い雰囲気を感じました」
「それはどういうところで感じますか?」
「デモ行進の映像を流されたということもあったのかもしれません。言葉で上手く表現できないのですが、何かよそよそしさとか、遠慮深さ、腫物に触るような感じでしょうか。それらが複合的に入り混じっているみたいな……」
「まず一つは、沖縄の人に対しては、贖罪意識みたいなものはあるでしょうね。沖縄戦という言葉があるように、日本で唯一米軍と地上戦を行った地です」
「それで多くの戦死者が出ましたものね」
「日米あわせて20万人と言われています。その後、復帰までの27年間はアメリカの施政下に置かれます」
「その復帰が基地付きだったので、思いとしては複雑だったということでしょうか」
「当時はそうでしょうね。基地のない沖縄を目指したのは確かですからね。ただ、今の沖縄は、基地との共存を模索し始めたと見ています」
「ここからが本論です ↓」
沖縄返還以降、地政学的な重要性が増す
沖縄がアメリカから返還されて50年経ちます。沖縄が返還されるまでは、東シナ海にある大きな島という様な位置付けだったのですが、皮肉と言うか、偶然と言うか、返還以降は地政学的に年とともにその要衝の度合が高まっています。
1971年6月に 沖縄返還協定が交わされて、 アメリカから日本に対する沖縄の施政権の返還が決まります。 同協定の合意議事録で返還対象区域に尖閣諸島が含まれているのですが、中国及び台湾が公式に尖閣の「領有権」の主張をし始めます。
尖閣問題についての解決の「チャンス」がすぐにやってきます。重大な問題については事前に日本との緊密な協議を約束していたにも関わらず、71年7月に突然、アメリカ大統領のニクソンが翌年の5月までに訪中することを発表してしまったのです。いわゆる、「ニクソン・ショック」です。
これを機に、米中の国交正常化が実現し、同盟国の日本はこれに従うことになるのですが、上手く乗り切れば尖閣の火種をここで消すことが出来たのに、棚上げをして、さらに台湾についても中国に「釘」を刺されてしまいます。
(「withnews.jp」)
南シナ海は、日中友好の海から、対立の火種を持つ海になった
沖縄に施政権が返還された4か月後の1972年9月、日中共同声明が署名され、日中の国交は回復されることになります。当時の日本は田中角栄首相、中国は周恩来総理です。この国交回復によって、台湾との断交を日本は選択してしまいます。
これは 1971年の日中共同声明において、日中両国は、「台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明」(外交青書17号)してしまい、それに則った措置でした。
当時は、このことが後世に於て大きな問題になるとは思ってもみなかったのかもしれません。その後、中国が経済的にも軍事的にも発展をし、21世紀には世界第二位の経済・軍事大国になります。そして、さらに「一帯一路」という世界統一構想を引っ提げて、拡張主義を前面に出してきます。
南シナ海は、日中友好の海から、対立の火種を持つ海になり、それと同時に沖縄は、中国と日米が激突する可能性をもった前線基地の様相を呈してきたのです。
(「NHK.JP」)
返還から50年、平和だったのは世界一最強の米軍が駐留していたため
沖縄は今や日米同盟にとっても、台湾防衛にとっても軍事的要衝になってしまいました。「基地負担」という言葉がありますが、基地機能を高める必要がありますので、それが出来るならば、負担軽減を考えれば良いということです。とにかく、沖縄の場合は、優先順位が東シナ海と台湾海峡の防衛ラインをいかに守っていくかというところにあるのです。
返還から50年、そのように「難しい」位置にありながらも、戦争・戦闘に巻き込まれず平和な時を過ごすことができたのは、世界一最強のアメリカ軍が駐留していたからです。そして、そもそもアメリカだから返還が実現したのであり、例えばソ連(ロシア)、中国が沖縄を占領していれば、返還は望み薄ですし、場合によっては政治的な弾圧をされていた可能性が高いでしょう。
事故や事件が起こらないに越したことはありませんが、それらの類は基地があってもなくても起きます。
中国の軍事力は今や日本の約5倍、ロシアは1.2倍です。それだけの差がありますので、日本だけでは要衝の地を守ることは出来ません。沖縄は、沖縄、さらには日本のために基地との共存という道を選択するしかないと思われます。
(「沖縄タイムズ」)
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