「ロシアがウクライナの東部2州を独立国として承認したというニュースが入ってきましたが、ウクライナ問題が何か大変な方向に行きそうですね」
「東部2州というのは、ロシアと国境を接する関係上ロシア系住民が多い地域ですが、だからと言ってロシアが勝手に独立を承認することは許されません」
「国連の安全保障理事会の緊急会合が開かれているようですが、当のロシアが常任理事国なので、何も決まらないでしょうね」
「私もそう思います。経済制裁を発動せざるを得ないので、日本もG7各国と連携を取って経済制裁をすることになるでしょう」
「アメリカやEU各国の反対を押し切ってまで、今回また一歩踏み込んだ行動に出たのですが、理由は何ですか」
「根底には、ウクライナが治めた地域はもともとロシアのものだったという意識があると思います。ただ、それを前面に出して言うことは出来ない。何年か前に併合したクリミア半島を併合しましたが、ウクライナ東部を抑えれば安定的に統治できますし、東部を抑えれば黒海から地中海、大西洋といったラインが見えてきます。世界戦略上、重要との計算があると思います」
「素朴な疑問ですが、世界一の広大な領土をもっているのに、どうしてさらに領地を広げようとするのですか?」
「ロシア人の持っているDNAがなせる業だと思います。もともと、ロシアという国は領土的野心が強いのです。これは狩猟民族の本性みたいなものだと思っています」
「領地を巡って何十万年も争ってきた歴史が彼らをそうさせるのでしょうか?」
「第二次世界大戦が終わって、人々は平和の時代が来たと思ったかもしれませんが、平和のひとときであったと後世の歴史家が書くかもしれません。このような領土的野心を剝き出した行動というのは、伝染性があります。他の国に影響を与えます。日本も用心をして、態勢を作っていく必要があるのです」
「態勢というのは、どういうことですか?」
「経済制裁を仮にした場合、当該の国との資本や貿易などの結びつきが強いと、相手国の制裁が自分に跳ね返ってくることになります。それを避けるために、今から仕入れ先、提携先を総点検するということです。危険度が増しそうな中国とのサプライチェーンを見直すということです」
「ここからが本論です ↓」
民族のDNAは、代を経て受け継がれていく
その民族のもっているDNAというのは、代を経て受け継がれていくのだと思っています。時代が変わり、政治体制が変わったとしても、その国民性というか民族性というのは維持されていくと特に最近思うようになりました。
今年はニクソン大統領の電撃的な中国訪問から50年を迎えます。アメリカは中国が豊かになれば民主化は進むだろうという期待のもと、米中共同声明で両国は国交正常化に向かうことになりますが、結果的に期待は大きく裏切られます。
50年経って、当時のアメリカの期待というか読みが甘かったということが分かります。歴史を紐解いて、その民族の特性や志向をきちんと調べずに、勝手な憶測や期待で物事を判断するために間違いが起こるのです。日本はアメリカに右に倣えをします。パンダ外交と言われ、中国との友好ムードが高まり、中国語を習う人が増えました。日本人のおめでたさは、これからもきっと変わらないでしょう。
(「時事通信」)
ロシアは常に領土拡張政策をとってきた
幕末から明治期にかけて日本は常にロシアの軍事力に怯えてきました。そういうこと国であることを深く認識する必要があります。
ロシアの使節プチャーチンの来日については、教科書でも紹介があります――「ペリーについでロシアのプチャーチンもふたたび来航し、下田で日露和親条約を結んだ。この条約で、下田・箱館のほか長崎を加えた3港を開港し、国境については択捉島以南を日本領、ウルップ島以北をロシア領とし、樺太は従来通り国境を定めないことが約定されている」(『詳説日本史』山川出版社/251ページ)。
日清戦争は、日本の勝利に終わり、その結果 ①中国は朝鮮の独立を認める ②遼東半島と台湾の割譲 ③賠償金の支払いという内容の下関条約を結びます。ここで登場してくるのがロシアです。ロシアはフランスとドイツを誘って日本に対して遼東半島の返還を要求します。その要求は、当然軍事力を背景としたものですから、一種の恫喝です。一戦を交える自信はありませんので、日本は返還しますが、その遼東半島をロシアがかすめ取ります。三年後に遼東半島の旅順、大連に朝鮮半島と日本を見据えるように、東洋最大の軍事基地を作るのです。
中国は日本に負けたことによって「弱い」ことが分かってしまい、日清戦争を契機に中国は欧米の「草刈り場」になります。日本は日清戦争に勝利をして、朝鮮半島の独立を中国に認めさせたので当面の危機はなくなったのですが、今度はロシアが日本の脅威として立ち現れることになります。
日本の歴史の教科書には、その辺りの流れを的確に説明しているのが少ないのです。だから実際に、日本史を学校で勉強しても、何のために中国やロシアと戦争をしたのか、きちんと理解していない生徒が多いのではないかと思います。下手をすると、軍国主義日本という括りの中で、中国やロシアと戦争をしたという説明をしている教師もいるのではないかと思います。
(「Neovid」)
日清戦争も日露戦争も朝鮮半島、さらには日本を守るための戦いだった
日清戦争も日露戦争も朝鮮半島を守るための戦いであったことは確かです。日清戦争は朝鮮半島をめぐって日本と清が争った戦争です。日本が勝って中国の影響力が半島からなくなると、今度はロシアが入ってきたのです。
ロシアの南下政策と言われていますが、単なる政策ではなく、侵略的領土拡張主義が根底にあります。朝鮮半島に影響力を及ぼそうとしてきたのです。半島をロシアに抑えられてしまえば、日本の命脈が尽きてしまうかもしれなかったのです。
その辺りのことについて自由社の中学の歴史教科書は正確に書いています。この教科書は、一度文科省の検定不合格となったものです。「日本の10倍の国家予算と軍事力をもっていたロシアは、満州の兵力を増強し、鴨緑江河口の龍岩浦に軍事基地を建設し始めました。このまま黙視すれば、ロシアの極東における軍事力は、日本が太刀打ちできなくなるほど増強されるのは明らかでした。政府は手遅れになることを恐れて、ロシアとの戦争を決意しました」(『新しい歴史教科書』自由社/191ページ)
10倍の国家予算と軍事力をもっていたロシアにどうして日本が勝てたのか。まともにやって勝てるような相手ではなかったことは確かです。チームワークと作戦の勝利です。バルチック艦隊を日本海海戦で全滅させたことが大きかったのですが、その陰にはフランス、イギリスの協力があったのです。イギリスは日本と1902年に日英同盟を結びます。ロシアが入手予定の軍艦をイギリスが手に入れて日本に回してくれたり、フランスはバルチック艦隊が求めた補給を拒否しています。そしてアメリカのルーズベルト大統領のタイミングの良い仲介など、さまざまな要因が重なって半島からロシアの影響力を排除することができたのです。
日清戦争、日露戦争の主戦場は朝鮮半島です。朝鮮半島が日本の防衛の生命線だったからです。今、韓国は日本の植民地経営のことを批判しますが、やむにやまれぬ選択だったことは確かです。朝鮮の人たちが自立して自国を守ることができれば一番良かったのですが、それが全く不可能な状況だったのです。結局、その半島をめぐって清、そしてロシアと一戦を交えることになったのです。
半島をロシアに抑えられてしまったら、日本の防衛上大変な危機となります。半島を主戦場としながらも、当時の人たちは防衛戦争という気持ちで戦っていたと思います。歴史は繰り返すと言いますが、今ロシアはウクライナを取りに行こうとしています。多くの国の協力と連携が必要だと思います。
(「中日新聞」)
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