「大使館と領事館は、どう違うのですか?」
「大使館というのは、外交がある国の首都に置かれます。大使館業務を助けるために総領事館が置かれることがあります。大使館が本部で、領事館が支部というイメージだと思います」
「アメリカが中国に閉鎖の要請をしたのは、総領事館の方ですね」
「21日に、ヒューストンにある総領事館の閉鎖を通告、3日以内の閉鎖と職員の撤収を求めた模様です」
「中国がまた何か悪さをしたのでしょうか?」
「具体的な説明はしていません。アメリカの知的財産と個人情報を守るためと言っています」
「インターネットに領事館の2階の踊り場で書類を燃やしている写真が載っていましたね」
「消防車が出動する騒ぎになったようですよ」
「シュレッターすればいいのに」
「跡形もないようにするためだったのでしょう」
「余程知られてはいけないような機密書類だったのですね」
「ヒューストンはNASAの宇宙センターで有名ですが、医薬分野の研究も活発に行われています」
「中国にとって重要な研究データがある都市ということなんですね」
「日本もヒューストンに総領事館を置いていますが、極めて友好的です」
「ここからが本論です ↓」
今年の6月までは「米中新冷戦」という捉え方
前から多少の兆候はありましたが、コロナ禍を境にして、完全に人、いや国が変わってしまったと思います。
コロナ騒ぎが武漢から起こりました。多くの入院患者が出ているという情報が日本にも流れ、それに対して、日本で支援の輪が広がります。
環球時報といえば、日本政府に対して強硬な論調の記事がよく掲載されるメディアとして知られていますが、その中で日本政府が武漢市在住の邦人を帰国させるため1月28日夜に政府チャーター便を運航した際、大量のマスクや手袋などの支援物資を運んだことなどに触れ、「安倍晋三政権は各国の中で最も適切、明確に支援を表明している」と、隣国から届けられた「恩」に素直に感謝している心情が表れています。
さらに武漢市と友好都市である大分市から3万枚、イトーヨーカドーから100万枚のマスク寄贈があったことに触れ、「日本の官民の支援に中国では感動の輪が広がっている」としていたのです。さらに、大阪の商店街は「ガンバレ 武漢」の垂れ幕を掲げたり、四川省の友好都市である広島県は8万枚のマスクを送ったりして友好ムードが漂っていました。今年の2月頃の話だと思います。今はそういう雰囲気はないと思います。
手元に2019年12月3日付の『日経』の記事があります。「米中関係と日本」と題して行われたシンポジウム(主催/日経新聞社、兵庫県立大)の概要を伝える内容です。福田康夫元首相、エズラ・ボーゲル氏(ハーバード大)の基調講演と5人のパネラーの発言を簡単に紹介しています。
中国に対して批判的な意見もありますが、「秩序再編へ枠組み模索」(福田康夫)、「文化や歴史の理解カギ」(エズラ・ボーゲル)、「巨大国家を統治するため」(滝田洋一/『日経』編集委員) ある程度は仕方がない、「道理示し共存の道」(五百旗頭真/兵庫県立大理事長)、「破壊ではなく、一緒に生きる道を見いだすべきだということを結論にしたい」(モデレーター)ということで、何とか米中両者の妥協点を見いだし、その仲介役として日本が何か出来れば良いということで話がまとまっています。
実は、この日本のポジショニング(立ち位置)は、それからしばらく6月の上旬までは変わっていません。というのは、甘利明自民党税調会長が「米中新冷戦『日本が仲介を』」(『産経』2020.6.4日付)という趣旨の発言をしているからです。
「戦狼(せんろう)外交」―――世界征服に向かって歩を進め始めた
この1.2か月、中国共産党政府の尋常ではないような「暴れ振り」に驚かされます。
『ウルフ・オブ・ウォー(英語表記:Wolf Warrior)』という中国のアクション映画の中で、「戦狼(Wolf Warrior)」の元隊員の主人公が活躍するのですが、それに準(なぞら)えて「戦狼外交」と言われています。
非常に攻撃的で、反応が瞬時に返ってきます。まさに独裁国家を地で行くような反応の早さです。
中国共産党政府が、南シナ海に行政区を設けたと発表したのが4月18日です。中国共産党政府は「南シナ海のほぼ全域を囲む『9段線』を独自に設定し、……12年7月には南沙、西沙、中沙の3諸島を管轄する行政単位として三沙市を新たに発足させた」(『朝日』2020.4.21日付)のです。
これに対して、アメリカは明確に「違法」であると、初めて意志表示をしたのです――ポンペオ国務長官は、7月13日に「南シナ海の大半の地域またがる中国の海洋権益に関する主張は完全に違法だ」と批判をし、2016年のオランダ・ハーグの仲裁裁判所の判決を支持する考えを示したのです(『産経』2020.7.14日付)
日本は技術力を高める必要あり
仲介役ができるような状況ではなくなった以上、自国の領土と権益を守るために、日米安保条約の趣旨に則って、アメリカと連携強化をしていく必要があるでしょう。
そのためには、我が国は科学技術力を高め、人材を恒常的に育成する施策をとらなければいけません。
その点について、ノーベル賞受賞者の野依良治氏は「日本では政府の科学軽視」(『産経』2020.6.28日付) を問題視しています。その上で「研究開発投資の伸びは過去20年間で1.2倍である」としてその少なさを嘆いています。「米英独仏は2倍程度、韓国は6倍、中国は20倍」と指摘しています。
中国が「戦狼(せんろう)外交」に踏み込んだのは、経済力・軍事力もさることながら、先端技術研究が世界で1.2位まで進んでいるという自信から来ているのです。
『日経』の1面のトップ記事(2018.12.31日付)ですが、「先端技術研究 中国が先行」とあります。ナトリウムイオン電池、酸化還元、光触媒、水素発生触媒、カーボン電子ドット、微生物燃料電池、バイオ炭、ナノ発電機、リチウムイオン電池など30テーマのうち、実に23の分野で中国がトップ、アメリカが7分野でトップと、両国で1.2位を分け合っています。
ちなみに日本は、その30のテーマのうち、ベスト5位内に入ったものが14種類あるという状況です。
そして、中国は今、「5G」の普及を加速しています。すでに「5G」対応のスマートフォンの契約は5000万件を突破。年内には国内で対応スマホが100機種出そろい、契約数で世界の7割を占める見通しとのことです(『日経』2020.5.12日付)。
昨日のニュースによれば、火星探査ロケットの打ち上げに成功したとのこと、つい先日は中国製のリニアモーターカーが時速600キロの試験走行に成功したという話も伝わってきています。
「5G」のサービスは世界20カ国以上でスタートしたばかりです。中国が先行して欧米やアジアがその後を追い上げるという展開となりますが、2025年には中国は契約数が8億件を超え、世界の約5割のシェアを確保するだろうと言われています。
世界第二位の軍事力をバックにしながら、先端技術でも先行しているので、そのまま力で押し切ろうとしているのかもしれません。その方針が他国との摩擦を生んでいます。
この2.3か月の間だけでも、オーストラリア、インド、ブータン、ベトナム、イギリス、カナダ、モンゴル、そして日本です。
世界の流れは早くなっています。日本はその流れについていっていません。先頭集団から少しずつ離されかけています。それが今の状況です。
読んで頂きありがとうございました。
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