女子テニス部の顧問として全国大会に9回出場
(この文章は2/16日に書きました)
実績もない無名の部活動に、経験者は入ってきません。最初のうちは、全員初心者からのスタートです。考えたことは以下のことです。①正しいラケットの握り方から始まって、打ち方を教えて、まずフォームを作る。②球拾いは全員が交代で行う。③1年生には、ラケットとボール遊びを多くして、友達づくりをさせる。④全学年公平に扱いつつ、実力主義を導入する。⑤素振りは初心者のうちはさせない。⑥ボールを多く打たせるために、球出し中心の練習。⑦球出しはすべて私が行い、フォームをそこでチエックする。⑧ラリーはある程度打てるまではさせない。⑨テニス日誌をつけて、親に見てもらい親の関心が向くようにする。⑩卒業を祝う会などのイベントを行って、部員間の親睦を深める。
そんなことを心掛けて、地道に活動を続けて実績を上げると、その噂を聞いてジュニア(小学生からテニスの試合に出ている子)の生徒がぽつぽつ入って来るようになりました。今、プロで活躍している青山修子選手は、そんな頃に入ってきた生徒です。お父さんが手ほどきをされていて、入ってきた時は少し上手な女の子といったレベルでした。そういう子が入るようになり、全国大会に行くのが当たり前みたいな雰囲気になっていったのです。
青山修子選手(写真はテニス365より)
頭角を現したのは、高校生のころ。全日本ジュニア選手権大会16歳以下でダブルス優勝。
同18歳以下でもシングルスベスト16、ダブルスでは優勝を飾りました。(FocusCoreより)
現役教師が考える「部活動文化」の重要性
「部活動文化」と敢えて言わせていただきます。スポーツ活動でもなく、教育活動でもない日本独特の部活動をどう取り扱えば良いのかという問題があります。
なぜ、部活動のあり方が今まで、それほど問題にならなかったのかと言いますと、公立でも私立でも突き詰めて考えてこなかったからです。教員が顧問をし、大会は顧問が引率しますので、その点では教育活動です。それでは、すべての顧問教員が放課後の部活指導を行っているかと言えば、人によって違います。「名だけ顧問」、「形だけ顧問」という言葉があるように、最低限のことしかしない教員もいますし、それで許されてきました。なぜなら、部活動は生徒の自主活動なので、実際に入らない生徒もいるからです。私立学校もそういった考え方に右倣えをしてきたのです。
ところが、「ゆとり教育」の事実上の撤回、授業時数確保が叫ばれ始め、いじめや不登校などの問題で時間が割かれ、職場がブラック化する中で労働時間について、改めて実態を調べていくうちに平均して小学校が57時間29分/月、中学校が63時間20分/月というように超過勤務が常態化していることが分かってきたのです(過労死ラインは80時間/月)。
教育の仕事は時間では測れないということから、公立学校ではタイムレコーダーを置かないで、出勤簿に印鑑を押して処理をするというのが長年の慣例でした。そして、その代わりに一般行政職の公務員よりも4%上乗せした調整給の支給という形で処理されてきたのです。
ただ、そのような形での処理はもう許されませんので、何を教育活動とするかを決めた上で勤務時間の上限を定める必要性が出てきたのです。そして、部活動を教育活動と定めた上で、教職員給与特別措置法(給特法)を改正し(2019年)、上限のガイドラインを月45時間、年間360時間と定め、今度の2020年4月からスタートする運びとなりました。
だから今度は、その時間の中で、授業時間と部活指導の時間を考えなければいけなくなったのですが、人によっては、つまり部によっては、それで収まり切れないケースが出てきます。それを埋めるために、部活動指導員を各学校3名まで認めることにしたのですが、その3名という人数の必然性はありません。多分、教育予算から割り出した数字だとは思いますが、相変わらず柔軟性に欠けた対応しか文科省は考えが及ばないようです。
部活動を教育活動と定めたのに、なぜか文科省は運動部の指導員のガイドラインをスポーツ庁に作らせ、文化部のそれについては文化庁に作らせているのですが、画一的な内容(週2日は休むなど)となっていて、部活動そのものがよく分かっていないと判断せざるを得ません。
子供に教育を受ける権利(憲法26条)があり、部活動を教育活動と認定したのならば、行政の都合ですべてを決めるのではなく、子供たちの実態に合わせて教員や指導員の配置を考えるべきだと思います。部活動といっても、そのレベルや活動内容、さらには部の考え方は様々です。全国大会を狙って、猛練習をしたい部活動もあれば、同好会のような部活動もあります。それから、部も構成員は毎年変わりますので、レベルが上がったり下がったりします。顧問が変わることもあります。教員の意識もそれぞれ違います。中には、かつての私のように部活動に命を懸けるくらいの人もいます。逆に、教師は授業がすべてと考えている人もいます。そのようなことがいろいろ起こるのは、人間の集まりだから当たり前です。行政には、そういった教育現場に合わせて教員の養成と配置、部活動指導員の配置といった裏方の仕事がきちんとできるようになって欲しいと思います。
企業に70歳までの就業機会確保への努力義務を課す「高年齢者雇用安定法」の改正案が今の通常国会に提出されるとのこと。定年を最初に導入する時に、当時の平均寿命に合わせたという経緯があります。それを考えると、将来は75歳ということも充分あり得ます。その歳まで健康で働くことが出来る身体を作っていくということを考えると、若き時代の部活動は重要だと思います。
「生涯スポーツ」と言いますが、若い頃に、ある程度身体の筋肉を鍛えていないと、身体をいざ動かそうと思っても動きません。動かなければ、健康を維持できません。
文科省は、中学生や高校生が勉強のついでに部活動をしているという捉え方ではなく、将来の貴重な人材の健康づくりという観点と「部活動文化」を守り育てるという使命感をもって、学校ごとに個別具体的に予算や人員を配分できるシステムを考えて欲しいと思います。
萩生田文科大臣は、年頭のあいさつの中で文科省の職員に対して「プロの行政官たれ」と訓示をなされました。プロのお手並みを、ぜひ拝見したいと思っています。
読んで頂きありがとうございました