「香港の自治を一切否定する、香港抑圧法が制定されてしまいましたね」
「彼らの『自治』の考え方がよく分かりますね。共産党の方針に従う限りにおいての『自治』ということです」
「イギリスに対しても、そういう抗弁をするのでしょうね」
「そうでしょうね。確かに、返還から50年間は『自治を保障』と言ったが、あくまでも我々が考えている『自治』だと。国を危うくさせるような破壊行為までを含めた「自治」は絶対に認められない、というのが彼らの理屈です」
「成る程、それはそれで筋が……」
「ダメだよ。この程度の屁理屈で納得しちゃあ」
「そうよね、だけど、安倍首相は何も言っていないわよね。日本は発信力が弱いといつも思います。そして、すぐに丸め込まれるところがある」
「菅官房長官が「憂慮する」と一言述べただけです。この辺りの理由の第一は、二階氏の存在でしょう」
「媚中派と言われていますよね。彼が幹事長にいますからね。菅さんも忖度したのでしょうか」
「あと、日本人は言い争いが苦手な民族なのです。そもそも自分の考えを他人に対して時間をとって伝えるという習慣も風習もありませんでした。スピーチを弁論と翻訳したのは、明治の時代です」
「私も人前に出ると、緊張しちゃって喋れなくなってしまうのですが、日本人のDNAがなせる業なんですね」
「その点、中国は2000年から3000年の伝統がありますからね。白髪三千丈の国ですから。口八丁手八丁、相手がこう言えばああ言うと、切り返してきますよ」
「その話を聞いて「三国志」の世界を思い出しました。謀略あり、裏切りあり、だまし合い、そして裏切りと不信が漂う世界ですよね」
「そう言うと身も蓋もない感じがしますが、中国を舞台にした壮大な国盗り物語ですよね」
「もしかしたら、中国習近平は「三国志」国盗り物語の世界版をしようとしているのではないでしょうか」
「中国とアメリカ、後はどこ?」
「日本は、そういう野望をもたないわよね」
「野望で考えるならば、ロシアでしょう。(ここからが本論です ↓)」
共産主義思想は、猪突猛進にさせる働きがある
教科書には中国と表記、マスコミも中国と言いますが、そういった漠然とした表記の仕方は物事の本質をぼかすだけです。そもそも、19世紀まで中国大陸には、中国という国家はありませんでした。中国3000年の歴史と言う言葉で惑わされないようにして下さい。中国大陸に数多くの王朝が勃興して、相争う長い歴史は確かにありますが、王朝はそれぞれ途切れています。
今の中国は共産党が統治する一党独裁国家で、戦後に建国された国です。中国と一括りにしないで、中国共産党によって支配された国というのが正確です。そして、日中友好と言いますが、中国の人民と友好なのか、中国共産党政府と友好関係を結びたいのか、はっきりする必要があります。共産主義思想というのは、マルクスがユダヤ人国家をつくる国際環境を形成するために編み出した革命理論です。特徴は人為的に仮想の敵をつくります。それを撃破することにより、新しい理想の共産主義社会が訪れるという夢物語です。
人は心の片隅で英雄になることに憧れています。歴史の表舞台に立って、国のリーダーとして英雄になりたいという人間心理を巧みに採り入れながら、マルクスは経済学や哲学の概念を巧みに取り入れて学際的な理論に仕上げたのです。理論の組み立て方が演繹的なので、すでにゴールが示され、目の前にパンがぶら下げられ、それを食べることは歴史の必然だと言われれば、頭が軽い人ほど猪突猛進で突き進んで行くことになります。今の、中国共産党の習近平を取り巻く状況がまさにそうです。彼らの発言を注意深く聞いて下さい。「必然」ということをよく使うようになっています。極めて危険な状況だと言わざるを得ません。山本リンダではありませんが「どうにも止まらない♪」(ちょっと古い)かもしれません。
彼らは何故いつも目を吊り上げて、強い口調でモノを言うのか
これは狩猟民族として、長い間大陸に住んできたことによって身についた一種の処世術なのです。弱みを見せることは、彼らにとってタブーなのです。「理想的な人間というのは、誰に対してもつねに緊張を崩さず、毅然とした態度を維持する人間」(岡田英弘「今こそ中国幻想を捨てよ」『別冊正論』2012.9)なので、酒席で酔っぱらうような人間は信用されず、次のお誘いが無くなるということです。そして、小声で何かひそひそ話をしていると、何か悪いことでも企んでいるのではないかと思われるので、必ず大きな声で喋るのがマナーということなのです。彼らは声を大きくして、自己防衛をしているのです。
続いた王朝がなかったことは、彼らのアイデンティティの形成に影響を与えていると思われます。目の前の王朝が、いつ何時無くなるか分からないのです(日本人には、分からない感覚かもしれません)。権力者が過ちを犯した場合は、「易姓革命」(孟子)をしても良いという教えもあります。人間は、確固たる存在の上に、自分の人生や自分の生きがいを乗せて生きる動物ですが、激動の中国を歩んできた人たちは、信頼できるものは基本的に自分自身と自分を取り巻く集団だけです。自分たちのテリトリーを作り、それを広げ、周りのものを排除する傾向を示します。
今、コロナウイルスと香港の問題で、世界から批判の声が上がっています。批判の声を止めさせるのは、簡単です。きちんと陳謝して、ウイルスの発生原因の科学的調査に協力し、香港の自治については、自治権を与えることを世界と香港市民に笑顔で約束すれば、すべて丸く収まる問題です。日本人の感覚だと、そんな簡単なことで解決できるのだから、早くすれば良いのにと考えるかもしれません。
しかし、これを中国共産党に求めるのは無理です。まず最初の陳謝があり得ないことです。彼らは言質を取られることを極端に嫌うからです。トランプ大統領が賠償責任と言っていますのでなおさらでしょう。もちろん、武漢ウイルス研究所への立ち入りを認めないでしょう。周りの国は、原因を作ったのは彼らなので、彼ら自身が上手く場を治めれば良いと思い批判しているのですが、実は批判をすればするほど、彼らは内部で固まり、自分のテリトリーを増やそうとする行動をとります。それは長い歳月を経て彼らのDNAの中に組み込まれたプログラムなのです。
中国を巨象にしたのは、アメリカと日本
中国を巨象にした第一責任者は、何と言ってもアメリカです。ソ連との冷戦という状況下において、その状況を有利にしたい、さらにはベトナム戦争の終結を模索していたという状況の中で出てきたのが、米中の和平合意です。
1971年に当時のアメリカ大統領のニクソンが突然中国訪問を発表して世界を驚かせ、翌年に予定通りに訪中をして毛沢東と握手をします。米中は共同宣言を発表して、敵対関係にピリオドを打ちます。その後、1979年にカーター大統領と鄧小平のもとで国交正常化を果たすことになります。ただ、この結果、中華民国(台湾)は国連において中国の代表者としての地位が無くなり、さらにやがて世界の多くの国との正式な国交が途絶えることになります。
日本はアメリカの後追いをします。1972年の日中共同声明を経て、1978年に日中平和友好条約が結ばれます。第一条で主権・領土の相互尊重、相互不可侵、相互内政不干渉が明記され、第二条で反覇権、第三条で両国の経済的、文化的関係の一層の発展を述べています。
日中の国交が結ばれると、企業の中国詣でが始まります。安い労働力を求めて、競うようにして工場を建て、事業所を置いたのです。もちろん、そのような企業行動は日本だけではありませんが、そのことが中国を第二の経済大国に押し上げることになります。
特有の中華思想がもともとあり、そこに共産主義思想が加わり、第二の経済大国という自信と世界第二位の軍事力が揃ってしまいました。そして、今、全人代が開かれ共産党の代表者が一同に会しています。人が集まれば気分は高揚します。そこにもってきて、せっかく苦労して制定した国家安全法に対して各国から多くの批判を受ければ、沸点を突破することもあると思われます。
日本がアメリカに真珠湾攻撃を仕掛けて太平洋戦争が始まりましたが、その時の米日の軍事力は4対1でした。現在、米中の軍事力は2.8対1です(ちなみに、中国は日本の約5倍強です)。
日本は軍国主義によって目がふさがれて、数字の上で無謀な戦争に突入しました。沸点を突破した場合は、無謀という言葉が聞こえなくなるのです。そこが人間集団の怖いところなのです。
世界の軍事費 (5位まで)
①アメリカ 7320億ドル
②中国 2610億ドル
③インド 711億ドル
④ロシア 651億ドル
⑤サウジアラビア 619億ドル
(SIPRI/ストックホルム国際平和研究所調べ)
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