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【日本「4.0」国家戦略のリアル】―—戦略は戦術に勝る / 近隣諸国の暴発に備える時期

「今日はエドワード・ルトワック氏が書いた『日本4.0 国家戦略のリアル』(文藝春秋.2018年)を紹介します」

女性

「その「4.0」の意味は何ですか?」

「彼の独特な日本史観なんですが、1.0を江戸幕府の開闢、2.0を明治維新、3.0を終戦直後、4.0を現在とした上で、3.0までは戦略があったのに、4.0の現在は戦略がない、ということを言いたいのです」

女性

「なるほど、私は2.0までだと思いますけどね……」

「すごい、私と意見が合いますね。いつも違うのに……」

女性

「ところで、著者のエドワード・ルトワックという方は、どういう方なんですか?」

「経歴を紹介すると、アメリカ戦略国際問題研究所(CSIS)上級顧問とあります。専門は軍事史、軍事戦略研究、安全保障論とあります」

女性

「イージスアショア(地上配備型ミサイル迎撃システム)の配備計画が頓挫したというのが、最近のニュースでしたが、あれが良かったか、悪かったのか、戦略的に考える必要があると思っています」

「まさに、おっしゃる通りで、配備されなくて良かったねとか、そういうレベルで総括されるようなことではありません」

女性

「だけど、結構日本人は、こういった問題に対して、余り現実味をもって考えようとしませんよね」

「それがある意味、この間の一つの傾向になっていますよね。悪く言えばタカをくくっている、というところがあると思います」

女性

「キチガイに刃物、という諺があるので、万全の対策を立てる必要があると思っています」

「北朝鮮は『日本列島を核爆弾で海中に沈めるべきだ』という声明を2017年の9月に出しています。そして、現実に核装備をしていて、30~40発の核弾頭を保有していると言われています」

女性

「政治は万が一を考えて、万全を期すというのが、あるべき姿だと思いますけど……」

「コロナ対策で終始している感じですね」

女性

「巨視的に見ていないので、いつもバタバタしている感じがするのですね。(ここからが本論です) ↓」



 「戦略は戦術に勝る」(エドワード・ルトワック)

冒頭で紹介したエドワード・ルトワック氏は、戦略家です。戦略というのは、長期目標です。個人でも、企業でも、国家でも長期目標が必要です。ただ、人はともすると、目先のことに気持ちが奪われがちで、広い視点から歩むべき方向を余り考えようとしません。これは、ある意味不思議なのですが、個人にしても企業、団体にしても、よくあることなのです。

戦術と戦略という言葉があります似たような言葉ですが、比較的短期間の作戦が戦術です。ついつい戦術に目を奪われて、それを立てて満足という感じがあるのです。ただ、戦術で勝っても、戦略がないと、結局負けてしまうというのが、彼の主張の真意です。

戦略は戦術に勝るのである」(エドワード・ルトワック 前掲書.13ページ)と言います。その例として、第二次世界大戦の真珠湾攻撃を例に取って説明しています。真珠湾攻撃を指揮したのは、当時の連合長官の山本五十六です。「トラトラトラ」(我、奇襲二成功セリ)なので、作戦、つまり戦術としては、大成功ですが、最後に負けます何故か。簡単に言えば、その後の「手」がなかったし、大局観が全くなかったので、「戦略として最悪」(エドワード・ルトワック 前掲書.13ページ)だったということなのです。

 

 明治維新と戦後システムについても評価

明治維新によって日本の近代化が達成されたというのは、異論がないところだと思います。明治維新についての評価はいろいろありますが、私は成功裡に終わったと思っています。エドワード・ルトワック氏は、「非ヨーロッパの国で、包括的な近代化を達成したのはやはり日本人だけだった」(前掲書 14ページ)と言います。

戦後についても、手放しに評価しています。「1945年、日本はまた新しいシステムを発明した。この『戦後システム』の特徴は、弱点を全て強みに変えた点にある」(前掲書 15ページ)と、最大限の評価をしています。ただ、戦後の戦略については、当事国の関係者であることを考えて、その分を差し引いて読む必要があるでしょう。

ただ、それはさておいて、戦後の経済発展によって短期間のうちに世界第二位の経済大国になったことは確かなので、そこは評価されても良いのかもしれません。そして、どうしてそれが達成出来たのか、ということについて戦略家である彼の答えは、負けを素直に認めたからだ、と言います。

「えっ」と一瞬思うかもしれませんが、彼は「現代においても、敗北を認められない国々は少なくない」と言います。彼が例として挙げているのは、パレスチナやアラブ諸国です。いわゆるイスラエルとの中東戦争を言っています。中東戦争は結局4回にわたって行っていますが、いずれもイスラエル側の圧勝に終わります。それでも、負けとは言っていないのです。

負けを認めることによって、国としても次の段階に行くことができる。そこがクリアされていないので、何かあるとそこに戻ってしまい、最後は上手くいかなくなってしまうということなのです。国も人間も同じなのですね。


 朝鮮半島では対立が永遠に続く可能性がある

1950年に北朝鮮の南進から始まった朝鮮戦争ですが、3年後に停戦協定が結ばれて、それから67年経った今もなお停戦中です。そのため、世界地図の38度線あたりの軍事境界線が、いつまで経っても点線のまま表記されています。

同じ民族なのに、一つの国にまとまることができず、一党独裁の共産主義国家と民主主義的なシステムを採り入れた国家に分かれて、時にはいがみ合い、時には接近しながら、基本的には別々の道を歩んできました

ところが昨年の丁度今頃、朝鮮半島の板門店で両国の首脳が堅い握手を交わしたのです。あの映像を見て、もしかしたら事態は収束に向かって動き出すのかもしれないと思った人が結構いたのではないかと思いますが、今回の「ビラ騒ぎ」でまた元に戻ってしまいました。

朝鮮半島の対立は、このままでは永遠に続く可能性があります。理由は、朝鮮戦争についての評価をお互い共有しようとしないからです。戦争をしたことは事実ですので、どちらが負けたのか、あるいは原因を作ったのはどちらなのかを確定する必要があるのです

結局、そういったことを曖昧にしたまま両首脳が握手をしても、抱擁をしても、駄目なのだということが今回の事例で分かったことです

朝鮮戦争は北側が最初に攻め、韓国が追い詰められたのを見て、国連軍という名の米軍が助っ人に入り、今度は大きく押し返し、北朝鮮が危うくなったのを見て中国の人民解放軍が入ってきて押し戻し、38度線辺りで膠着状態となり停戦というのが粗方の成り行きです。中国とアメリカも絡んでいるので、そこが難しいところです。結局は、どちらかが国家として存続できなくなるのをお互い待つしかないのかもしれません。



 日本は戦略を立てる時期に来ている

「日本はいま、また新しいシステムを作る必要に迫られているのではないだろうか」(前掲書.18ページ)とルトワック氏は言います。それに続けて「『日本4.0』が戦わなければいけないフィールドは、北朝鮮の脅威、米中対立を軸とした『地経学』的紛争、そして少子社会である」と言います。

「地経学」というのは、彼の造語です。地政学というのは、国際的な政治力学を考える場合は、地理的要因を考える必要があるというものですが、それに対して、「地経学」ということを言っています。これは要するに、国家戦略を考える場合は、その国を取り巻く経済的状況と政治的状況の2つの視点から捉えなさいということなのです。そして、これからの時代は、そういった視点が大事だと説きます。

日本はどちらかというと、経済と政治を分けて考える傾向が強いのです。中国は、そこに目をつけていると思います。政治的関係が悪化しても、企業取引を別にして考えてくれる国と捉えているので、平気で領海侵入を繰り返すのです。財界や企業関係者、さらには政党も、政治と商取引は別と考えがちです。「脇」が甘くなったところから入って、政界に影響力を伸ばすというやり方をとっているのです。

アメリカは政治、経済、教育がすべて一体という中国の手口を見て、貿易戦争にまず打って出たのです。そして留学生や研究員についても従来の方針を転換し始めたのは、アメリカ防衛のための戦略に基づいているのです。

戦略というのは、簡単に言えば大局観です。お花畑の世界の中で生きている訳ではなく、舵取りを間違えれば滅亡ということもある世界の中で生きています。滅亡の泥沼の中に沈まないためには、コンパスをもって進むべき方向を定める必要があります。それを定めて、今度は国民にそのことを知らせる必要があります。日本は両方とも行われていません

そのように体軸が真っすぐになっていないため、スイングをしても常にブレています。イチローが大リーガーの選手として活躍できたのは、小学校の時に自分の目指す目標を定めることができたからです。

彼に倣って、国家としての目標、戦略を定めます。そうすれば体軸が真っすぐになり、あらゆる変化球に対応できるようになり、世界の舞台で活躍できます。今は相手の繰り出す変化球に翻弄されているような状態です。

読んで頂きありがとうございました。

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