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高校教育無償化よりも先にすること ―― 義務教育に関する国の負担金を増やすことが大事 

「今日のニュースでやっていたのですが、調布市の公立小学校は今度の4月から、体育館と図書館を早朝の7時半に開放するそうです」

女性

「親御さんは助かるでしょうね」

「小1の壁と言われているようですが、子供が小学校に通い始めると保育園のように無理がきかなくなり、仕事をやめてしまう人も出てくるようです」

女性

「私の会社は子育てに好意的だったので、何とかここまで来ていますけど、苦労されている方は、やはりいますからね」

「教育の無償化が話題になっていますが、そういった細やかなところにお金を使って欲しいと思います」

女性

「子どもの見守りということで、1校あたり3人くらいの人員が必要だそうですが、そういう費用を国は面倒見てくれるのですか?」

「教職員の人件費の1/3を国が負担していますが、臨時職員の分については、出ないと思います」

女性

「基本的には、地元の自治体が負担するということですね」

「東京のように財政に余裕があるところは、そういうことができますが、そのように出来ない自治体もあります。火の車の自治体もありますし、財政破綻した自治体もあります」

女性

「そこに住んでいる子供は恩恵を受けることが出来ないというのも何か変な話ですね」

「教育費が原則自治体負担という考え方自体がおかしいですし、それを変える必要があるのです」

女性

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「パブリネット」の提供です」

 義務教育費国庫負担という変な言葉

戦後になって教育は権利(26条)とされ、義務教育は無償とされました。教育にかかる費用について、国が全面的に負担するのが当たり前ですが、日本では国と自治体がそれぞれ負担し合うという慣行が長年行われています。現在は、公立小中学校の教職員の人件費の1/3を国が負担し、残りを自治体が負担するというかたちになっています。

この慣行がどうして始まったのか、という問題意識から調べていくと、明治の学制期の時代に原因がありました。1872(明治5)年に学制が発布され、全国に小学校が建設されるようになるのですが、当初は授業料をとっていたので就学義務はありませんでした。「学制反対一揆」まであった時代です。実際にデータを紹介しますと、明治6年の時の就学率は28%でした。そして、殆どが男子児童だったのです。

小学校を設置したのが地元の自治体でしたので、その経費については地元と親が負担するという基本的な流れがそこで出来てしまったのです。その後、就学率も徐々に上がり、義務教育が普及し始めるような状況の中で、1918(大正7)年に教職員給与の一部国庫負担を法定したのです。これが現在まで引き継がれているかたちになっています。

(「You Tube」)

 義務教育に関する国の負担金を増やすことが大事

戦後しばらく経った頃の1952(昭和27)年に、当時の文部省は「義務教育費国庫負担法案」を提出します当初の文部省案は、教職員の給与だけではなく、学校建設費や維持管理費など、全額を国庫保障するというものでした。ところがこれが政府部内で大きな問題となり、結局当時の政権政党である自由党が文部省と大蔵省との間に入って政治決着をした結果、教職員給与の1/2を国庫負担するというものに落ち着きます。

そしてこれが、2006年度の小泉政権下で進められた「三位一体の改革」の中で国の負担割合が1/2から1/3に引き下げられたのです。国庫負担を減らし、その分の財源を地方税として地方に移譲することで、自治体の自主性を高めるという理由をつけて、国の負担を減らそうと財務省が考えたのです。

そして、現在もなお、この考え方の下で国の教育行政が行われています。学校の施設設備費や維持管理費、部活指導員や補助員に対する人件費など、様々な費用が掛かりますが、国が負担するものは、正規の教職員の給与の1/3だけなのです。下のグラフを見て下さい。日本は公的な教育負担が先進国グループ(OECD)の中で最低です高校教育の無償化の前に、義務教育に関する国の負担金を増やすのが先だと思います。教育関連費用に対する自治体の費用負担は、財政基盤の弱い自治体にとっては厳しい状況だからです。地方創生と言っているのですから、その地方を助けることをまず考えないと「楽しい日本」「楽しい地方」にはなりません

(「木村達哉オフィシャルサイト」)

 人件費の国庫補助を財務省から出すべき

公教育関係の教職員給与については、文科省が管理をして地方自治体に交付しています。なぜ、こういう「遠回り」をする必要があるのでしょうか。文科省がそれなりの権限で財務省と折衝できるのならば、一歩譲って現状でも良いと思いますが、弱い立場にあるため、常に予算が抑えられる傾向にあります。そもそも、教育行政を担う省庁が教育予算を交付するのは奇異な感じがします

教育予算をちらつかせながら、望ましいかたちに教育行政を誘導することも出来てしまいます。例えば、統廃合をして、子供をまとめてしまえば、教員の給与を含む教育経費を削減することができます。そんなことから、学校建設についての補助金を上乗せするという条件を提示して、統廃合の方向にコントロールすることも出来てしまうのです。

自治体が自分たちの教育設計についての責任主体なので、そこと財務省が折衝して教育予算を確保するようにすべきだと思います。当然、教育経費の全額は国庫負担です。変に文科省が介在しているので、自治体ごとの実情が充分に考慮されないことがあると思われます。そして、文科省が補助金を扱うことで天下り先を確保し、不透明な予算配分が行われる問題があります。予算を財務省が管理し、自治体と直接交渉する形にすれば、利権構造が崩れ、不正のリスクも低減します。  文科省は教育の本来の目的である「教育内容の充実」に専念できるようになりますし、  各自治体の教育委員会が、地域の実情に応じた柔軟な教育政策を実施できるようになります。高校教育の無償化よりも先に教育予算配分のシステムをシンプルにして、教育費が有効に使われるような方途を考えることが大事です。

(「いらすとや」)

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