「前回は、『春闘』という言葉が無くなるだろうということでした。最も、私の会社は中小企業ですので、『春闘』とは縁遠いので、前回の話は他人事のように聞いていました」
「今の勤務先では正社員ですよね。給料(賃金)は、どのようにして決められているのですか?」
「一応、勤務年数をベースにした大枠的な給与表があって、そこに手当てと職能給が加算されるというシステムです」
「職能給はどうやって決まるのですか?」
「会社の経営幹部の方が、様々な指標に基づいて査定します。そして、年度の終わりの2月から3月にかけて個別に話し合いをして、その後、来年度の契約をするという形ですね。実は、契約を解除される場合もあります。ただ、余程の場合以外は大丈夫です」
「基本給と職能給の額の割合はどの位ですか?」
「ウチの会社は1対2ですね。だから、勤務年数の違いよりも、働きが重視されています。ただ、その割合を1対3に変えるという動きもあります。今、社内で意見をまとめているところだそうです」
「勤務年数が長くても、評価が低いと給料が低いというシステムになっているのですね」
「そうですね。だから、今の時期は、社内はそれもあって少しピリピリ感が漂っています」
「だけど、働き甲斐という点ではどうですか?」
「良いような、悪いような。つまり、コンスタントに成果を出せる人は良いですが、私はどちらかというと、人の後を追いかけるタイプなので、時々しんどいなと思う時があります」
「あと、ベースアップというのは、あるのですか?」
「ウチの会社の組合は闘う労組ではなく、親睦的な組合なので、そういう要求を強く出すことをしていないと思います」
「ここからが本論です ↓」
労働組合運動、曲がり角の時代
労働組合運動が完全に曲がり角に来ていることは確かです。労使対決という発想をやめる時代となりました。もともと労使対決というのは、労働者と使用者(経営者)が一つのパイをどう分けるかという発想から来ているものです。一つのパイの2/3を使用者が取れば、残りの1/3を労働者の間で分けなくてはなりません。生活が出来なくなってしまいますので、取り分を1/2にするために皆で団結して頑張ろうということです。
ただ、これは前時代的な考え方になりつつあります。今は、労使で協調してパイの数を2つ、3つと増やすというように考え方を転換する時代になってきました。それでは、今まではどうしてそういう発想が生まれなかったのでしょうか。
それは、そんなに簡単に生産量が2倍、3倍になるような生産部門はなかったからです。第1次産業(農林水産業)を思い浮かべていただければ、すぐに理解できると思いますが、品種改良をしたからといって、たかが知れています。工業製品も同じです。仮に作ることができたとしても、それに合わせて需要が増える訳ではありません。つまり、パイはいつまでも1つのままであることが多いのです。となれば、どう分けるかが極めて重要になります。どうしても「団結頑張ろう」になってしまうということです。
(「note」/パイの奪い合いは誰も幸せにしない(松井博))
データとソフトの組み合わせで新しい商品開発や新規の産業分野を開拓する時代
現在は、データとソフトの組み合わせで新しい商品開発や新規の産業分野を開拓する時代です。そういった市場が成立すれば、新たな需要が生まれ、企業としても大きな利益を得ることも出来ます。実際に、アメリカのGAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの4社)は、20世紀の後半から21世紀に誕生したIT企業です。すべて若い会社ですが、あっという間に巨大産業になりました。理由は2つあります。モノを作って売る産業ではないということと、新規の市場を彼らが開拓したからです。無競争という真空地帯をロケットが突っ走るように企業が巨大化したのです。簡単な表にまとめてみました。
Amazon | Apple | |||
設立年 | 1998年 | 1994年 | 2004年 | 1976年 |
時価総額 | 1兆9800億ドル | 1兆8600億ドル | 9600億ドル | 2兆6300億ドル |
ちなみに、日本のトヨタは世界に誇る多国籍企業ですが、つい最近時価総額が40兆円を超えたと大きなニュースになりました。40兆円という数字は確かに大変な金額ですが、ドルに直すと約3500億ドルです。4社の一番下位のFacebook(現在はMeta)の1/3強です。
このGAFAが新しい産業分野を切り拓いた先進例ですが、このように従来の起業の発想を変えて、新たな市場を開拓すればパイが2つ、3つとなり、場合によっては10、あるいは20にもなるという時代に入ったのです。
(「ダイヤモンド・オンライン」)
古めかしい価値観や化石の思想を脱ぎ捨てよう
そういった時代の流れの影響を受けているのが連合です。連合というのは、労働組合の中央組織ですが、「政治や政党との関係を巡り新たな動きを見せる」(「日経」2022.2.4日付夕刊)と報じられています。その記事の内容は、「政府・与党への接近」ということです。そして、実際に1月上旬の連合の新年の交歓会に現職の総理大臣としては9年ぶりの出席だったそうです。
当事者たちは意識していないかもしれませんが、これは一つの時代の流れです。労働組合だから、経営者に敵対して自分たちの分け前を少しでも多くではなく、労使が協力して知恵を出し合って新たな商品開発と市場を開拓する時代です。そして、パイを大きくしつつ、多く獲得できるようにする時代です。「仲間内」でいがみ合う時代ではないということです。
いまだに共産党は戦前の「町工場資本主義」の時代の資本家階級、労働者階級という言葉を使っていますが、労働者に働かせておいて自分は葉巻でもくわえてふんぞり返っているという資本家はどこにもいません。経営者(CEO)も時代の流れを読み、新たな商品開発や企業の発展のために、休まず努力をしている日々だと思いますし、そうでなければ大企業といえどもあっという間に淘汰されてしまいます。そして、今や資本などなくてもアイディア一つで起業できる時代ですし、実際に高校生で起業をしている人もいます。データとソフトの組み合わせであれば資金は必要ありませんし、10年位の経営計画がしっかり立てられていれば銀行は融資をしてくれます。
時代は激しく流れ、考え方も変わってきています。古くなった洋服を脱ぎ捨てるように、古めかしい価値観や化石の思想にこだわっていてはいけない時代です。近くを見て、遠くを見る。そうすると、自分の立ち位置が分かり進行方向が分かります。停滞は許されません。時代の風が吹く方向に歩まれんことを願います。
(「Wikiwand」)
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