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「一難去ってまた一難」の日本大学 ―― 私立大学新法を制定して対応する必要あり

「本箱の片隅に『日大の帝王』(宝島社)があったので、持ってきました」

女性

「えっ、こんな本が出ていたのですか。「田中英壽理事長と巨大私学の伏魔殿」とありますね。まさに、今のこの時にピッタリという本ですが、最近の出版ですか?」

「これは、2018年の9月に宝島編集部から出ています」

女性

「誰か個人が書いた本ではないのですね」

「身の危険がありますからね。いや、それは冗談ですが、かなり取材を丹念にしていますので、個人では無理だと思います」

女性

「何回か新聞を賑わせましたが、今の進捗状況はどうなんですか?」

「「夕刊フジ」の記事によると、「田中理事長の逮捕は秒読み段階」と報じています」

女性

「ただ、私の聞いた情報では、田中理事長は絶対に逮捕させない、という力が働いているので、どうなるか分からないというものです」

「日大は私学で一番多くの学生数を抱えていますので、扱っている金額も半端ではないでしょう。日大利権という言葉も生まれている位ですからね」

女性

「ただ、それは本来おかしな話だと思いますけどね」

「もちろん、それは多くの人が感じているでしょう」

女性

「ここからが本論です ↓」

 「一難去ってまた一難」の日本大学

2人の会話の中で紹介した本は、2018年のアメフトの悪質タックル事件を機に噴出した日大の混乱と内紛問題を扱っています。この書の「はじめに」の中で今回の悪質タックル事件を機に「日大の硬直した指揮系統が正常化すると考えている関係者は皆無である。日大の最高実力者は田中英壽理事長であり、側近であった内田氏が大学を去ったとしても、田中氏が理事長に君臨する限り体育会のパワハラ体質が変化することはないと誰もが感じ取っているから」(同上、2-3ページ)と指摘しています。

悪質タックル事件というのは、2018年の日大と関西学院との一戦において、無防備の関西学院の選手に対して監督の指令を受けた日大の選手が後ろからタックルをして、相手選手を負傷させたという事件です。この時の監督が、内田氏であり、その時に理事であった井ノ口氏も同時に責任をとる形で辞任をしていますこの時に辞めた井ノ口氏が、今回の背任事件で背任罪の容疑で逮捕され、再度理事を辞任しているのですが、いつ、どのタイミングで日大に戻ったのかは分かりません。当然、そこには田中理事長の指示があったことは間違いありませんが、日大のホームページを見ても、理事の学歴、経歴を載せていないので、詳しい年月日は分かりません。学歴、経歴の公開について、法的な義務はありませんが、例えば早稲田はきちんと公開しています。名前だけの紹介では不充分と考えます。

そして、本の裏表紙にこう書いてあります――「学生数7万人、卒業生116万人を誇る国内最大の私立大学、日本大学。その頂点に立つ『ドン』田中英壽理事長がいま最大の苦境に立たされている――」。現在は、2021年ですので、その時の苦境は乗り越えたということです。「一難去ってまた一難」ということかもしれませんが、その「一難」はすべて自らが招き入れたものです。自身の大学経営についての考え方が変わらない限り、「一難」は繰り返し訪れると思います。

 4年間で2回理事を辞任した井ノ口氏

この4年間で2回も理事を辞任した井ノ口氏ですが、上記の本によりますと、日大を卒業した後、自動車販売のセールスマンやゴルフ用品の販売などの仕事を転々としながら、たまにアメフト部の臨時コーチとして顔を出していたようです。その彼がやがて日大職員として採用され、やがて日大理事に昇格します。

その彼が日大事業部の取締役に就任し、そこが中心となって今回の日大板橋病院の建替え工事の発注を行っていたのです。そもそも、日大事業部というのは、一体何なのか。これは2010年に日本大学が100%出資して作った株式会社です。この会社は要するに、中間搾取企業です。何かを製造したものを販売するのではなく、学生やサークルなどの各種団体、付属学校からの注文をまとめ、それを業者に発注するという事業です。例えば、大学全体で使う多くのコピー用紙を事業部が一括して仕入れて、利益を上乗せして各学部に納入するのです。

この事業部が急速に成長します。それはある意味当たり前だと思います。事業そのものに何のリスクもないからです。右から左に商品を横流しして、そのリベートを取るだけの会社です。2017年の売り上げが69億になり、5年前(約7億8千万)と比べて9倍となります。ただ、その金額は本来は学生やサークル団体、付属校に還元すべきお金なのです。

井ノ口氏は2011年から「日本大学事業部 理事長付相談役 事業企画部部長」という肩書を使うようになります。そして、彼は、2017年には様々な功績が田中氏に認められて、理事に抜擢されることになります。

(「読売新聞オンライン」)

 私立大学に対する新法を制定する必要あり

私立学校法は1949 (昭和24) 年に制定された法律ですが、これは教育基本法の「法律に定める学校は、……国、地方公共団体及び法律に定める法人のみが、これを設置することができる」との規定を受け、「法律に定める法人」についての規定を作らなければならない事情に応えて作られたものです。

ただ、幼稚園はともかくとして小学校から高校までと、大学はその設立の歴史を辿ると目的が違います。日本の場合は大学にも学校という名称を使いますが、ユニバサール(ユニバーシティ)の語源を辿れば、自然界や一般社会のことについて広くその法則や有り方を研究する場ということで付けられたネーミングです。それに対して、小学校、中学校といった教育機関は、すでに解明されたことを理解、教える場として位置付けられたのです。大学は学問研究を本来の目的とし、学校はその成果を理解し学ぶ、まさに勉強をする場という捉え方です。余談ですが、「お勉強」と言いますが、「お学問」とは言わないのはそのためです。

日本国憲法は「お勉強」に対しては第26条(教育を受ける権利)を用意し、学問に対しては第23条(学問の自由)を用意しています。だから、本来は設立された組織の歴史的経緯や憲法の趣旨を汲んで別々の法律を用意する必要があるのです。ただ、当時は私立大学が数えるほどもなかったという事情があったのでしょう。とりあえず総則的な法律を作らなければいけないということで、「私立」という枠に大学と小中学校を一括りにしたものを作ったのだと思います。ただ、その後進学率の増大もあって私大への進学者が増えます。ちなみに、日大は約7万人、早稲田5万人、立命館3.5万人です。

2006年に教育基本法を改正しましたが、その際に大学についての規定(第7条/「大学は、学術の中心として、高い教養と専門的能力を培うとともに、深く真理を探究して新たな知見を創造し、これらの成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする」)を入れたタイミングで「私立大学」に関する法律を制定する必要があったのです。「私立大学」はその目的も含めて規模や在籍学生数が、他の小中高といった機関とは質的にも量的にも違うからです。ちなみに、私立高校は在籍数が2000人を超えると、大規模校という一般的な評価を受けます。そのような実態と日本一大規模な大学を舞台に経営者トップが絡む背任事件があったのですから、再発防止のためにも「私立大学新法」を作って現実的に対応する必要があるのです。つまり、財務と人事の責任者を分散する、大学が主体となっての株式会社の設立は認めない、理事者については学歴、経歴の公開を義務付けるなどを盛り込むのです。

   (「データマックスのNetB-NEWS」)

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