「歴史は繰り返すと言いますが、日中の力関係は、唐の時代に舞い戻りましたね」
「現在の日中の経済力の差は、どの位ですか?」
「2010年、つまり10年前に追い越されたかと思うと、すごいスピードで差が年々広がる一方です。それで現在は、中国のGDPは日本のGDPの約3倍です」
「私の2018年のメモには、2.5倍とあります。こうしている間に、引き離されているということですね」
「5年後には日本の5倍になり、今後10年以内にアメリカを抜いて世界一の経済大国になると言われています。考えなければいけないのは、経済力イコール軍事力だということです」
「それじゃあ、呑み込まれてしまうじゃあないですか」
「そう、だから、一番最初に唐の時代に戻ったねと言ったのです」
「その頃に戦争をしていますよね」
「白村江の戦い(663年)ですね。唐・新羅の連合軍と戦って日本は3万人の兵を失い、惨敗しています」
「新羅は半島の国ですよね。今の感じだと、中国と朝鮮は連合しそうですよね」
「韓国も北朝鮮も反日の気風が強く、中国の経済力がこのまま増大すれば、吸い寄せられるように連合関係が形成されても不思議ではないと思います」
「後は、アメリカの対中国政策がどうなるかということですよね」
「バイデン政権がまだ正式にスタートしていないのですが、トランプ政権のように敵対視しないのではないかと言われています」
「そうなると、日本の立場というか、取るべき方策は何ですか?」
「経済力を高めなければダメなんですが、それには今までの在り方の反省が必要です。ただ、「平時の反省」は、人も国もなかなか出来ることではないのです」
「白村江の戦いの反省の後は、どのような対応をしたのですか?」
「九州に水城を作って防衛体制を整備する一方、国の体制を基本的に考え直したのです」
「やがてその努力が平和な時代を長くもたらすのですね」
「奈良、平安時代ですね。源平の合戦がありましたが、それ以外に平安時代は大きな戦乱もなく平和な時代が250年くらい続きます」
「ここからが本論です ↓」
日中逆転の時代
1972年に日本と中国の国交が正常化し、1978年に日中平和友好条約が結ばれました。当時は平和友好の証として上野にパンダが来ましたので、パンダ外交と言われたこともあります。何となく、ほんわかとしたお祝いムードが日中間で漂った時代です。大学では、中国語を受講する学生が増えたのです。
そして、その年に中国は鄧小平が主導して改革開放路線に舵を切ります。日本企業は巨大な市場を目指して、競うようにして中国に進出したのです。当時の中国の人たちの様子がお茶の間にも紹介されるようになりました。人民服と自転車、遅れた国という印象でした。
政府はODA(政府開発援助)を実施します。日本が先進国、中国が発展途上という位置付けだったのです。
しかし、それから約40年経って日中の関係は完全に逆転をしてしまいました。経済的にも、軍事的にも中国が圧倒的優位な状況となってしまったのです。そして、実際に2017年秋以降、中国企業の日本進出が顕著になってきています。約40年前とは逆の現象が起きているのです。
「日本=先進国、中国=発展途上国」という先入観を捨て去る時
『2025年 日中企業格差』という本を図書館で見つけました。著者の近藤大介氏は2009年から2012年まで講談社 (北京)の副社長を務めている方です。現地中国の様子もよく分かります。中国から見た「日本の姿」も分かります。中身を少し紹介します。
中国では、完全なキャッシュレス社会が到来しているそうです。「スマホ決済は日々進化していて、指紋認証時代を経て、顔認証、静脈認証時代が始まっている。つまり、中国はあらゆる消費の基礎となる決済の部分で、日本のはるか先を行っているのである。この一点を取ってみても、『日本=先進国、中国=発展途上国』という20世紀的発想はもはや通用しない」(近藤大介 前掲書、47ページ)と言います。
「日本のスーパー大手も、今やサービス技術を中国で学んで日本に採り入れる時代になった」(同上58ページ)と言います。実際に、中国でのスーパーマーケット革命を起こした「盒馬鮮生」(フレッシュ・フーマー)の店舗を見て、彼は完全に日本を超えたと実感したそうです。無料の配送サービスがあり、店内の商品どれでも3キロ以内の住民ならばフーマーのアプリを通じての注文であれば30分以内に配達するそうです。鮮魚コーナーでは水槽の中で泳いでいる魚やカニを直接客が注文でき、調理を希望する場合はその場で調理してくれるそうです。野菜は有機野菜で日をまたいでの陳列はしないとのこと。すべての商品は店内各所にあるレジ台でスマホ決済するので、日本のようにレジの前に列を作るという光景は見られないそうです。
反省すべきは反省し、中国に追いつく努力を
もう我々の頭を切り替える時なのです。遅れた日本、進んだ中国と。そして、どうして日本は遅れてしまったのか、そこを考える時期に入ったということです。
倒産寸前のシャープが鴻海に買収され、その後V字回復をしました。買収からわずか1年8か月後に東証1部に復帰したのです。何があったのかということです。「責任の明確化とスピードアップ」、要するに「即断即決体制を整えた」(同上62ページ)ことによって息を吹き返したそうです。
実は、私自身も組織の一員です。日頃思っていた職場の組織の問題というのは、この書を読んで、もしかしたら日本の組織に共通する問題なのかなと思っています。決断をするのがトップの役目なのですが、そこにもっていくために、いろんな部署を通さなければいけません。通している間に、いつの間にか立ち消えになってしまうものもあります。
そして、最後まで事案を上げても、そこで決めようとせず変な委員会を立ち上げてみたり、勉強会を開催してみたりということで外堀を埋めようとします。外堀が埋まって、誰がどう考えても大丈夫という状態になって何とか決断してくれるという感じです。よく言えば、慎重で緻密、そしてエビデンスを求めようとします。大きな失敗はしないかもしれませんが、今のようにスピード感をもって激しく動いている時代では、通用しない場面が多いと思います。
中国企業の日本進出は今後さらに進むでしょう。幕末の黒船によって日本は長い眠りから目を覚ましました。その大きさに当時の日本人は度肝を抜かれたのですが、中国からの続々と押し寄せてくる経済の「紅船」に度肝を抜かれるかもしれません。目を覚ますかどうかは分かりません。眠ったままなのかもしれません。反対に、覚醒するかもしれません。
中国は、軍事的には尖閣を狙い、経済的には日本市場を狙っています。彼らは、当然ジョブ型雇用です。
日本の企業が、年功序列型賃金体系に基づく終身雇用制を維持しようとすると、新卒はどうしても安い給与となります。日本の優秀な若者たちを引き抜くために、高額な給与を保障する動きは中国の企業だけではなく、外資を中心に起きています。日本の企業も、ここ数年で変わらざるを得なくなると思います。
そういう中で、労働組合運動の在り方も変わっていかざるを得ないと思います。ベースアップは不合理であるとして、葬り去られることになるでしょう。
読んでいただき、ありがとうございました。
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