
「前回の木曜日は休日だったため、ブログは1回お休みしました。休日はどのように過ごされましたか?」

「子どもたちと「ドラえもん」の映画を観に行きました」

「そうですか……。私は墓参りに行きました。ところで、今日はガバナンスの話題でいきたいと思います」

「最近、よく聞く言葉ですよね」

「コーポレートガバナンス(CG)コードが導入されたのが2015年なので、ちょうど10年経ちます」

「要するに、規則に則って企業経営しましょうということですよね」

「おっしゃる通りです。こういう話が出てくるということは、いろんな問題が起きているということの裏返しなんです」

「悪いことをする人が出ると、それを追いかけるように法律が作られますものね」

「今日話題の企業統治ですが、2017年に経済産業省がガイドラインを策定します。アメリカ型の統治システムも紹介され、それに飛びついたのが日産自動車です」

「どうして、飛びついちゃったのですか?」

「カルロス・ゴーン元会長の逮捕劇があったでしょ。覚えていませんか? 彼が会社を私物化しました。あのようなことが2度と起きないように、ということを考えたのだと思います」

「レバノンかどこかに逃亡しましたよね。どうして、あのような方を日産は社長にしたのかなと思いました」

「そういうことがないようにということで、2019年に指名委員会等設置会社に移行したのです」

「その指名なんとかというのは、何ですか? 」

「その辺りは本論で説明したいと思います ↓ 表紙写真は「社会人の教科書」提供です」
社外取締役の設置が本格化して10年
企業のガバナンス強化の一環として、社外取締役の設置が本格化してから10年が経過しました。この間、日本企業における社外取締役の数は飛躍的に増加し、東証株価指数(TOPIX)構成銘柄の企業だけで8,452人が任命され、その数は10年前の3.3倍に達しています。しかし、その影響を冷静に分析すると、必ずしもポジティブな変化ばかりではないことに気付きます。
社外取締役の本来の役割は、企業の健全な運営を監視することにあります。つまり、安全操業を確保するための「監視役」であり、経営の実務に直接関与するものではありません。しかし、彼らの役割が過度に拡大されることで、企業の意思決定が遅延し、機動的な経営が難しくなるといった問題も指摘されています。例えば、日産自動車の取締役会を見ても、12人の取締役のうち8人が社外取締役となっており、経営の意思決定が円滑に進むのか疑問視されています。特に、グローバルな競争環境においては、迅速な意思決定が求められるため、こうした構成が本当に企業の成長に貢献しているのか再考する必要があるでしょう。
さらに、社外取締役に高額な報酬を支払っても、彼らが新規事業のアイデアを提供したり、企業の成長戦略を主導するわけではありません。むしろ、過剰な監視によって経営陣が慎重になりすぎ、リスクを取ることを避ける傾向が強まる可能性があります。この10年間で社外取締役制度は日本企業に定着しましたが、皮肉にも日本企業の生産性は後退しているとも指摘されています。今後は、社外取締役の役割と企業経営のバランスをどのようにとるかが、企業の成長戦略において重要な課題となるでしょう。
(「ツギノジダイー朝日新聞」)
経営の主導権は誰の手に?──監督と執行の完全分離がもたらす課題
近年、多くの企業が経営の監督機能と執行機能を明確に分離する「完全分離体制」を採用するようになりました。特に日産自動車はこの体制を徹底しており、事業の執行を担う役員と、それを監督する取締役を完全に分離しています。日産の場合は、取締役会の議長も社外取締役の方です。「社外取締役によりけん引される環境を創出しています」と公式サイトにも記載されています。しかし、本来、企業をけん引するのは社内取締役であるべきではないでしょうか。
この体制の下で、日産の取締役会は、①後継者を選定する指名委員会、②役員報酬を決定する報酬委員会、③会社の経営を監査する監査委員会の3つの委員会に分かれています(下の図参照)。これが2人の会話で出てきた指名委員会等設置会社の中身です。その下に、代表執行役5名が配置される構造になっています。しかし、最近の内田誠社長の退任に伴い、執行役のうち4名が交代することになりました。その一方で、社外取締役の8名は全員残留しています。この状況を見ると、社外取締役が主導権を握り、経営のかじ取りを行っているようにも見えます。果たして、これが企業の持続的な成長にとって最適な体制なのでしょうか。
さらに、ホンダとの経営統合が立ち消えになった背景には、このような経営体制が影響している可能性もあります。ホンダ側が、日産の意思決定のスピードや経営の一貫性に不安を感じたことも一因ではないかと推測されています。経営の監督機能を強化することは重要ですが、それによって企業の成長が阻害されてしまっては本末転倒です。今後、日本企業がグローバル市場で競争力を高めるためには、監督と執行のバランスを見直し、迅速かつ柔軟な経営体制を構築することが求められるでしょう。
(「Nissan Global」)
次世代自動車の競争を勝ち抜くために──EV・デジタル化・個別化への対応
自動車業界は、今まさに大きな転換期を迎えています。次世代の自動車は、「EV(電気自動車)+デジタル化+個別化」の三要素を軸に進化していくと考えられています。特にEVの普及には、充電インフラの整備が不可欠であり、官民一体となった取り組みが求められます。さらに、次世代車両には、安全性・快適性・居住性・自動運転・個別性といった多様な要素が求められるため、ソフトウェアの開発力が競争の鍵を握るでしょう。
「個別化」という概念も、これからの自動車業界において重要なトレンドとなります。近い将来、消費者は車のエンジンの種類や車内設備を自由に選択し、自分だけのオーダーメイド車を作れるようになるかもしれません。まるで服をカスタムオーダーするように、自動車をパーソナライズする時代が到来する可能性があります。これに対応するためには、メーカー側も従来の大量生産・販売モデルから、より柔軟な生産体制へとシフトする必要があります。
こうした変化に適応するためには、明確なリーダーシップの下で経営戦略を策定し、実行していくことが不可欠です。現在、一部の企業では社外取締役が過度に影響力を持ちすぎているため、経営の主導権が分散し、迅速な判断ができなくなっているケースも見受けられます。自動車業界の熾烈な競争を勝ち抜くためには、強力なリーダーシップを発揮できるCEOを中心に経営体制を整え、スピーディーかつ柔軟な意思決定を可能にする仕組みを確立することが不可欠でしょう。社外取締役の役割はあくまで補完的なものであり、企業の成長をけん引するのは、やはり社内の経営陣であるべきなのです。
(「PR TIMES」)
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