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『ポスト資本主義社会』(ドラッカー)の時代 / 歴史の転換期、価値観の大変動の時代

「ピーター・ドラッカーの『ポスト資本主義社会』という書を先月に引き続き再び紹介したいと思います。」

女性

「確か、アメリカの経営学界の重鎮だった人ですよね。」

「そうです。経営学部に入ると、教授から一般教養、あるいは常識として読んでおきなさいと言われるような書です」

女性

「ただ、ドラッカーの書を再び紹介する意義は何でしょうか?」

「私の手元にある書は2007年に発行されたものですが、現在を大転換期とした上で、今の資本主義社会から「知識社会」に移行するであろうと言っています。「その流れ」は確かにあると思っています。それを踏まえて、政治、経済、教育など様々なことを考える必要があると思うからです」

女性

「ところで、「知識社会」というのは、どのような社会なのですか?」

「教養ある人間が、ポスト資本主義時代における社会の代表であると言っています。そして、これからは知識が中心的な資源になるだろうとも言っています。」

女性

「知識が中心的な資源というのが、分かりにくいですね」

「知識の対極にあるものが労働です。労働が主なる価値を生み出した時代から、知識が価値を生み出す時代に移行するであろうということです。かつての時代には考えられないようなものが市場価値をもつ時代になりました」

女性

「その代表的なものがデータですよね。廃プラの製品化もその類ですよね」

「労働価値説自体がすでに破綻していることは分かりますよね」

女性

「いくら労働力を投下しても関係なく、結局、市場でその価値が決まるということですね」

「そうですね、労働力の投下量ではなく価値というか価格は、市場の需要・供給のバランスで実際には決まります」

女性

「アイディアや考えが一つの商品・サービスを生み出し、それが市場を通して売買されるという捉え方で良いですか?」

「良いと思います」

女性

「ここからが本論です ↓」




 新しい社会が胎動している時代

ドラッカーは現代を「歴史の転換期」と捉えます。ポスト資本主義の時代と言います

それについて「西洋の歴史では、数百年に一度際立った転換が起こる。世界は歴史の境界を越える。社会は数十年をかけて次の新しい時代に備える。世界観を変え、価値観を変える。社会構造を変え、政治構造を変える。技術と芸術を変え、機関を変える。やがて50年後には新しい世界が生まれる(ドラッカー名著集8『ポスト資本主義社会』ダイヤモンド社.2007/1ページ)と言います。まさに現代は、新しい社会が胎動している時代なのです。


 気を付けて欲しいのは「胎動」なので、古い資本主義も残っているということです。そもそも「資本」とは何でしょうか?資本は、価値を生み出すものなので、具体的には、土地、工場、機械などといった生産手段がそれに該当します。会社という組織も資本となりますし、その価値を分割した株式も資本です。

 この資本と労働力を掛け合わせることにより価値が産み出されるのですが、それはすべて一旦資本の所有者である資本家のものとなり、資本家が搾取した残りが労働者に賃金として配分されると言ったのがマルクスです。そして、労働者は「見えない鎖」によってつながれていると表現し、そこからの解放、そのための革命を唱えたのです。

 ただ、その主張は、現代の労働者の実態を言い表していません。実際に、現代の労働者は自身の知的能力を武器にして、条件の良い会社と契約を結ぶことができます。つまり彼らは、資本主義社会の労働者と異なり、「自ら生産要素と生産手段を所有する(ドラッカー前掲書/10ページ)のです。革命によってではなく、自らの知的価値を高めることにより「見えない鎖」を切ることができる時代になったのです。

 

 「知識社会」では、一人ひとりの技能と能力が試される

ドラッカーの主張は、労働力人口の内訳の変化とともに確かなものとして受け入れられていきました。実際に、マルクスが『経済学批判』で「搾取」の例としてあげているのは石炭や小麦といった1次産品です。そういった単純に物をつくったり運んだりする人たちは、今後機械化が進展し、AIが導入される中で確実に減っていくでしょう。そして、製造業、農業、鉱業、輸送業の生産性はそんなに大きく向上はしないと思われます。

彼は、これから来るべき社会を「知識社会」と名付けています。そして「知識社会」は「普遍性をもつ教養ある人間を必要とする(ドラッカー前掲書/268ページ)と言います。彼が言うところの教養ある人間とは、未来を創造するために、自らの知識、技能を役立たせようとする能力を有した人間です。

 新しい時代に見合った「ティール組織」

 そして、ポスト資本主義社会は「知識社会であるとともに組織社会である(ドラッカー前掲書/271ページ)と言います。組織社会といっても様々な形態があります。彼は3つの組織社会に分類します。1つは、野球チーム型、2つ目は、サッカー型、3つ目はテニスのダブルス型ですが、テニスのダブルス型こそがポスト資本主義社会にふさわしい組織形態だと言います。

 野球チーム型というのは、従来のピラミッド型組織です。それぞれのポジションがあらかじめ決まっています。いわゆる従来型の組織です。その対極にテニスのダブルス型組織があります。つまり、メンバー一人ひとりが状況によって自由に動かなければいけないという組織です。ポジションがあっても、場合によってはそこを離れて動かなければいけない、自由に考えることを由とする組織です。

 そういう組織を「ティール組織」と言います。上下関係や上司による目標管理がなく、一人ひとりが自らの意思と責任で動きながらお互いを支え合う組織です。『日経』に「100年企業もフラット組織」(2020.10.16日付)という記事が掲載されました。その記事によりますと、創業100年近い老舗の中堅・中小企業で組織を「ティール組織」に変更する動きがあったとのことです。

 その動きについて「こうした動きは若いIT企業などで先行していたが、硬直的な組織では変化の激しい時代に対応できないとの危機感が老舗企業にも及んできた」と報じています。同じく『日経』の記事によりますと、1924年創業の木村石鹸工業も進化型組織に転換したそうです。給与制度も自己申告制にして、半期ごとに自分がどのような価値ある仕事をして、会社に貢献するのかという目標を立て、社内委員会で発表するそうです。見合うだけの貢献プランであれば、2倍の給与を提示しても構わないそうです。木村社長は「会社への貢献意欲が高まり、新商品開発の積極的提案などにつながっている」と『日経』記事(2020.10.16日付)は紹介しています。一人ひとりの知的能力と帰属意識を高めるような雇用システムの開発が求められています。

 従来の横並び型の硬直した賃金システムでは、一人ひとりが「生産要素と生産手段を所有する」人材として評価されません時代にマッチした賃金システムを各企業で考え、導入し始める時代になりました。春闘、ベースアップ、組合活動といった言葉が死語になる時代に入ったのです。教育も今以上に個に焦点をあてたシステムを考え出す必要があります。それについては、どこかで書きたいと思います

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