「全国学力テストの結果が出ましたが、英語の結果が悪かったせいか、話題は英語に偏っています」
「そうですね。新聞報道を見ると、他の教科は殆ど話題にしていません。中3の国公私立の生徒約190万人を対象にしたテストですが、前回と比べて、聞く、読む、書く、話す、すべての分野で点数が下がっています」
「特に「話す」の正答率が低かったのですね――12%」
「日本語で話すこと自体がおぼつかない状況なのに、それを英語に求めるのは無理があると思います」
「私もそう思いますが、出来る子はできるので、親としては対策を考えてあげないといけないのかなとふと思うことがあります」
「将来、外国で活躍したいとか、商社マンで活躍したいという希望があれば、頑張らせれば良いと思います」
「昆虫博士になりたいと言っていますけど」
「だったら、英語よりも虫たちの言葉が分からないと……」
「冗談はともかくとして、全体的に点数が低くなった原因は何ですか?」
「私が調べた限りにおいて、その原因に触れていた新聞はなかったですね。これから分析するということだと思います」
「ALT(外国語指導助手)を導入して、デジタル端末の導入も進んだのに点数が後退するようでは仕方がないと思いますけど……」
「語学教育は即効性があるものではありませんからね。ある意味、準備段階が必要です」
「何となく非効率のような気がしますけど……。ここからが本論です ↓」
全国学力テストーー意見表明正答率「4%」の原因
渋谷区は英語教育重点校制度を採り入れている自治体です。そういうこともあり、週4回の英語の授業のうち2回はALTが主導し、授業時間8割は発話だそうです。そして、日本人の英語教師だけの時でも、半分以上が発話とのこと。(『日経』2021.8.1記事より)
渋谷区のように英語関係に充分に予算を回せるところはほんの一握りです。予算の関係や人材不足のためALTの参加が50%未満の中学校は8割に上るとのこと。そもそも、全国的に教員不足になっています。お粗末と言えば、お粗末な話です。
センター試験の英語の試験内容を見れば分かるように、かなり高度な英文解釈の技術が必要です。読んで書く能力と、聞いて話す能力は明確に違います。センターで求められているのは、前者の力です。後者の力が殆ど無くても高得点が望めます。にも関わらず、予算と人材をつぎ込んで「話す力」を伸ばそうとする。しかもフタを開けてみたら意見表明正答率「4%」。ーー。現場の状況が分かっていないのに、空想的な目標を立てて方針を降ろすため、このようなことになるのです。
(「You Tube/中京テレビNEWS」)
予算のかけ方がおかしい
首都圏の学校のように、企業や事業所が多く集まる自治体は多くの教育予算をとれて、なおかつ人材も確保できるでしょう。ただ、「話す力」を付けさせるという方針を立てたならば、渋谷の教育環境を全国標準にできるようにするべきです。
それが出来ないのなら、都道府県ごとに1~2校を英語教育重点校に国が指定して、それについての関連予算を全額国が負担する位のことをすべきだと思います。
要するに、全国的に英語の力をあらゆる分野に於て上げようとしているのであれば、計画や予算のかけ方が杜撰です。これではJAXAのロケット発射実験と同じです。失敗で終わります。そして、そのように特定教科だけの点数を上げようとするのではなく、学力全体を上げることを考えないといけないと思います。
(「産経ニュース」)
国際競争力が高い国は教育に多くのカネをかけている
スイスのIMDが毎年国際競争力を発表しています。日本は35位ですが、1位のデンマーク、2位のアイルランドは教育にかなりの力をかけています。両国とも、小学校から大学まで学費は無償です。日本は大学院の博士課程の学生まで授業料をとりますが、アイルランドでは、研究者と見做されて研究費が支給されます。
世界の先進国は、少子化に合わせて教育に金をかけるようにしてきたのですが、日本は頭の中が昔の「子だくさん」の時代のままで受益者負担主義教育を1970年代から続けてきたのです。受益者負担主義というのは、高い学歴を得れば将来高い収入を得る確率が高いので、その利益の前倒しとして学費を取るという考えです。
ただ、今や高学歴社会になり、大卒をエリートとは言いません。であれば、高等教育における公費負担を増やすべきだと思います。英語の話す力を上げる為だけの予算であるならば、今の時代は殆ど意味をなさないと思います。そもそも日本は日本語だけできれば、生涯不自由なく暮らせる国です。話す力が必要だと感じた人が個別的に努力すれば良いと思います。
(「Visit fem.jp」)
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