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AI時代に見合った英才教育をいかに行うか / 一人の天才が国を救い発展させる

女性

「知っていましたか。私も、藤井棋聖と同じ愛知県の人間なのです」

「それがどうした、僕ドラえもん♪」

女性

「もう少し驚いてくれるかなと思ったのに……」

「藤井棋聖ばかりに注目が集まっていますが、囲碁界の小学生プロを知っていますよね」

女性

「そう言えば、昨年話題になっていましたよね。名前は何て言うんでしたっけ?」

「仲邑(なかむら)菫(すみれ)初段です。順調に実力を伸ばしているようです。先月には男性(41)の6段棋士を破ったそうです」

女性

「えっ、凄いですね」

「それで今年の成績が10勝10敗になり、デビュー以来の通算成績を27勝17敗にしたそうです」

女性

「藤井君みたいにタイトルを取れると良いですね」

「どこかで取ると思いますが、何歳でとれるかですよね」

女性

「楽しみが増えましたね」

「ところで、彼女は日本棋院が2019年度に創設した「英才特別採用推薦棋士」制度の適用第一号の棋士だということを知っていましたか?」

女性

「初めて知りました。英才発掘制度なんですね。どうして、そういったシステムを作ったのですか?」

「日本棋院副理事長の話によると、「世界で活躍するプロ棋士を育てなければ日本囲碁界はどうしようもない」(『日経』2019.1.18付)ということらしいのです。要するに、中韓と日本との差は開くばかりで、日本は世界大会の予選すら勝ち抜けなくなっている状況で、それを打開したいということなのです」

女性

「なるほど、そういった事情があったのですね」

「教育界もそのような英才教育をシステムとして採り入れることを考える時期ではないかと思っているのです」

女性

「ここからが本論です ↓」

  国家戦略と教育戦略の両輪立てで考えるべき

今までは囲碁界の話ですが、日本の今の状況と二重写しになって仕方がありません。今の日本の教育の現状を考えると、このままではやがて中韓をはじめ多くの国々の後塵を拝することになるのではないかと心配しているからです

人材サービス世界最大手のアデコが「世界人材競争力指数」(2019年版)を発表しています調査対象国125カ国のうち日本は22位で、前回調査より2つ順位を下げています。ちなみに1位はスイス、2位はシンガポール、3位は米国です(『日経』2019.1.22付)。

日本の順位が下がっている大きな原因は、人材育成を含めて教育戦略とリンクした国家戦略がないからです。そうなると、個々に優れた教育実践や時々の教育方針が打ち出されたとしても、教育力を高めることに寄与しにくいのです。そして、それが高まらないと、人材が育ちにくくなり、国力が弱まります。つまり他国との経済戦争で負けることになります。

「22位」というのは、近い将来の日本の経済力の順位を暗示しています現在のGDP3位という到達点は、今までの先人たちの努力の数字であって、現在行われている施策を反映したものではありません。たまに錯覚をしている人たちがいますので、一応念のために申し添えておきます。

国家戦略と教育戦略は両輪となります。人材を育成できなければ、経済発展できないからです。ただ、今の政府は両輪として捉えていません。教育については、公教育制度が機能しているので、これでよしという考えだと思います

政府は「アベノミクス」「観光立国」「地方創生」という言葉をよく言います。これを繋ぎ合わせると、世界から多くの人を呼び、それによって地方も中央も豊かになる。文化交流もできる。その力で経済発展をしようではないか、といったところでしょうか。これが国家戦略になります。

ただ、その程度の大雑把な国家戦略では、21世紀のAI時代を生き延びることはできません。沈没するでしょう。すでに「観光立国」が、コロナ禍で先が見通せなくなっています。そもそも、他国の観光客の数に経済発展を依存するという考え方自体が間違っています。変動リスクが大きいからです。

 

 一人の天才大臣が国のデジタル化をリードする


台湾のIT担当大臣にオードリー・ターン氏がいます。上の写真が本人(男性)です。一見変わった風貌(失礼)ですが、8歳でプログラミングを独学で学び始め、15歳で起業、開発したソフトは全世界で800万セットを販売。19歳でシリコンバレーでソフトウエア関係の会社を起業、37歳で米外交政策専門誌に世界の頭脳100人に選ばれ、台湾では「ITの神」と言われているそうです。IQが180を超えるということで、天才IT大臣として知られているそうです。

まだ、30代ですが、デジタル担当政務委員としてシステム構築の総責任者の立場にあります。今回、「マスク在庫アプリ」、つまりどこのお店にどの程度のマスクの在庫があるかが一目で分かるアプリをわずか3日で作ってしまったそうです。そういうことを含めて、コロナ対策において台湾が先進的な成果を挙げた要因の一つに彼の力があるということです

日本が地方にしろ、中央にしろ、行政のデジタル化が遅れているのは、オードリー・ターン氏のような人間を発掘して、「頭」に据えないからです。組織というものは、どうしてもトップのイメージ以上のものを構築できないからです。トップの頭がアナログ化していては、組織全体のデジタル化は進展しません。

ここで2つのことを考える必要があります。一つは、天才を育てる、発掘するシステムをどう構築するかということです。二つ目は、その人材を組織的にどう生かすかということですこの2つを考える必要があります。いずれにしても、組織が柔軟でなければ無理です。

例えば、日本の現在の硬直した教育制度では、天才が発掘されず、埋もれてしまう危険性が大です。実は、先に紹介したオードリー・ターン氏も14歳の時に不登校になっています。彼は間違いなくギフテッドと呼ばれる天才ですが、それ故に周りと波長が合わなく、時にはいじめを受けることもあります。日本では、かなりの数のギフテッドが社会の中に埋もれてしまっていると思われます。鈍才が英才を駆逐しているのです。

仮に社会の中で活躍できるようになったとしても、今度は「年功序列」の壁に阻まれることがあります。ましてや、政治の世界は結構「年功」が幅を利かせている社会です。

 天才を育てるシステムを作る時代―—そのためには教育権限を地方に委譲すべき

日本は社会主義国ではないのに中央集権的教育体制がとられていますが、例えばアメリカやドイツには、日本の文科省のような教育行政を統括的に行う省庁は存在しません。

特異な才能をもった子供達の能力を伸ばすシステムを作っていかなければならないと思いますが、文科省にはそういう考えは全くありません。ひたすら、今の「一律教育」を押し進めるつもりです。中国がお手本にしたという位、発想が共産主義的なのです。

歴史的に見ると、全国一律の一斉授業というのは近代に入って産業社会の大量生産時代に対応すべく生み出されたシステムなので、21世紀の現代には合いませんAIとの共存時代に突入し、個性や個々人の能力をいかに発見し、どう伸長するかに重きを置く必要が出てきました。個々の能力や適性に応じて教育プログラムを組む中で、全体を引き揚げることを考える時代に入ったのです

日本には江戸時代に多くの藩校、私塾、寺子屋があり、特色ある教育が行われた歴史があります。会津の日新館、佐賀の弘道館、私塾で言えば、松下村塾、適塾が有名ですが、司馬遼太郎は「この多様さは、明治初期国家が、江戸日本からひきついだ最大の財産」(『「明治」という国家』日本放送出版協会/1989年 76ページ)と評価しています。そのような伝統をもった国であることを深く自覚する必要があります。


真の地方創生は教育から行われるべきだと思っています文科省は権限にしがみついていますが、しがみつけばつく程、日本の教育は劣化し、国も競争力をなくすでしょう。早く地方に教育課程編成権を委譲し、地方の特色を生かした教育創造を行わせることです

例えば、ある県では飛び級を導入、ある県では英語に重点、ある県では農業に重点、というように地域の特性にあった教育カリキュラムを作ることができるようにします。そこに競争原理も働くようになるでしょう。上手くいっても、いかなくてもお互いその経験を共有すれば良いだけの話です

休校の判断も県単位で考えれば良いでしょう。全国一斉休校という愚策を行って、子供たちの学習を止めている場合ではありません。子供たちの力を引き出すことが、今求められていると思います。

そして、時代はAIとの共存の時代に入ってきました。頂点を引き上げる教育システムを地域ごとに作っていくことが必要です。そのためにも、教育課程編成権を含め、多くの権限を地方の教育委員会に委譲することが肝要です。国は専ら外的な教育環境整備をする側にまわるべきです。ひいてはそれが地域の活性化、地方創生に繋がると思います

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