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ウクライナの苦難の歴史(2) ―― ロシア革命以降も、苦難の歴史を刻むことに / ミンクス合意が、ロシアの侵略の口実に

女性

「前回のブログでロシアとウクライナとの違いがようやく分かりました」

「私も歴史を調べてみて、意外に袂を分かったのが早いことが分かりました。少し驚きというか、調べてみるものだなと思いました」

女性

「ウクライナはソ連邦の中に入っていましたので、日本人の感覚からすると、ロシアとウクライナは仲間だという捉え方をしてしまうのですね」

「それはヨーロッパの人たちも、もしかしたら同じかもしれないですよ」

女性

「それは、どういうところで感じるのですか?」

「2014年にクリミア半島の併合がありましたよね。その際に、ヨーロッパや日本も含めて世界の世論は殆ど反応しませんでしたよね」

女性

「考えてみれば、あれも露骨な侵略行為ですよね」

「だけど、「仲間」内の一種の喧嘩みたいなものという捉え方だったと思います。反対世論が形成されることなく、なんとなくロシアの統治になってしまったという印象です」

女性

「肝心のウクライナの当時の反応は、どうだったのですか?」

「当時の大統領はポロシェンコです。彼はロシアに対して融和的な姿勢をとったのです」

女性

「ロシアにとってみれば、好都合の大統領ということですね」

「それで彼の時にミンクス合意(2015)を、ドイツ、フランスの立会いのもと結びます」

女性

「ということは、併合された翌年ですよね。そもそも、ミンクス合意というのは、何ですか?」

「簡単に言うと、ウクライナ政府と同国内の親ロシア派の間で交わされた停戦合意協定です。隣国のベラルーシの首都ミンスクで調印されたので、その名前が使われています」

女性

「ただ、よく考えるとおかしな協定ですよね。例えば、日本のある県が独立したいと言って政府と対立、内戦状態になって、それを解決するためにその県の独立を認めるということですよね」

「結局それを今回の侵攻の口実にされているのです。ただ、当時の世界は他人事という感じで、真剣に合意の危険性について指摘することはなかったと思います」

女性

「ウクライナとロシアは仲間という見方をしていたのですね。ここからが本論です ↓」

 1917年ウクライナ人民共和国が一瞬誕生した

1917年のロシア革命でロシア帝国が崩壊します。その間隙を縫うようにウクライナ人民共和国が誕生します。ところが、新しく誕生したソビエトはウクライナの独立を認めず、結局両国の間で戦争が勃発することになります。

4年に及ぶ戦いが繰り広げられ、結局最後はソビエト軍が勝利をし、ウクライナは1922年にソビエト連邦に編入させられます。ちょうど、今から100年前のことです。節目にあたる2022年に、今回のようなことが起きたのは、何かの因縁でしょう。

100年前と違うのは、今の戦いがリアルタイムで世界に配信されるということと、ウクライナの後ろにアメリカをはじめとするNATO諸国がついていることです。

(「歴ログーはてなブログ」)

 ロシア革命以降も、苦難の歴史を刻むことに

ウクライナは編入されて以降、苦難な歴史を刻むことになります。一番過酷な出来事は、第二次世界大戦の独ソ戦の舞台となったことです。国土が焦土と化し、大戦中のウクライナ人の死者は兵士と民間人合わせて800万人から1400万人と言われています。

ロシアは戦勝記念日ということでナチスドイツとの戦いに多くの犠牲者を出しながらも勝った日ということで、毎年5月9日にイベントを行います。公式発表は、ソ連の犠牲者ということですが、実際に犠牲になった人の内訳を見ると、ウクライナ人がかなりの割合を占めていただろうと言われています。

今回の軍事侵攻で、ロシア側に少なくとも1万5千人の死者が出ていると言われていますが、「産経」の報道によれば、その大半が少数民族とのことです――「露軍の戦死者大半を少数民族や地方出身者が占め、首都モスクワなど大都市圏の出身者はごくわずかである実態が露独立系メディアの調査などから浮かび上がってきた」(6/9日付)ロシアは多民族国家です。要するに、かつての時代と同じように、前線にはロシア人を送り込むことをしていないということなのです。

その構図が理解できれば、ウクライナにチェルノブイリ原発があることが理解できると思います。1986年4月26日、旧ソ連ウクライナ共和国の北辺に位置するチェルノブイリ原発で原子力発電開発史上最悪の事故が発生しました。 東欧から北欧までの範囲に放射能が拡散するという、人類史上最大の事故だったのです。原子力発電の場合は、そのような事故が一番怖いのですが、そのような発電所をウクライナに建設するという発想に、ロシア人の本音が隠されていると思います。

(iーMART)

 

 ミンクス合意が、ロシアの侵略の口実となる

隣国に弱みを見せれば、攻撃の口実となるということがよく分かる事案がミンクス合意です。冒頭の「二人の会話」にもあるように、ロシアがウクライナの国内にある2つの地方を勝手に独立させ、そのことを力で認めさせてしまったのです。

当時の大統領はポロシェンコですが、彼はロシアとは融和的な姿勢を取り続けます。それに対して、国内からは多くの批判にさらされることになります。そのような中、2019年に国民の批判的な世論をバックにゼレンスキー氏が大統領選挙で圧倒的多数で勝利します。

ゼレンスキー氏は喜劇俳優出身の役者です。政治的経験は全くありませんでした。プーチン大統領は、政治的な素人が大統領になった今がチャンスと考えたのかもしれません。ウクライナ全土を支配するシナリオを勝手に作り上げてしまったのでしょう。

 

2022/2月21日 ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の独立を承認
2月22日 プーチン大統領(ロシア)ミンスク合意を一方的に破棄
2月24日 ウクライナの非軍事化を目的とした特別軍事活動を承認し、ロシア軍によるウクライナへの全面侵攻を開始

 

 ウクライナ侵攻―― プーチン大統領の3つの誤算

現在は、プーチン大統領が描いていた当初の計算がすべて狂っている状況だと思います。一番の計算違いは、ゼレンスキー大統領の力量でしょう。ここまでのウクライナの善戦は、彼の力に依るところが非常に大きいと思います。ロシアはウクライナに部隊を進めれば、大統領は腰を抜かして外国に亡命するだろう、短期間で制圧できると思っていたフシがあります。そうでなければ、東部と首都攻めの2面作戦を取らないでしょう。

2つ目の誤算は、反ロシアの国際世論です。その中には、ウクライナへの武器供与という実際的な動きもありました。そして、特にNATO諸国が、対岸の火事ではなく、ウクライナの次は自分たちの国かもしれないという切迫感をもって対応したことです。

3つ目の誤算は、映像文化の発達です。SNSで現地の様子が映像によって配信されてしまいます。かつての時代は、そのような映像がありませんので、口で何とでも誤魔化すことができたのでしよう。今は、論より証拠、証拠があるのにウソを塗り固めて乗り切ろうとしているロシアの政治指導者の言動がリアルタイムで世界に配信されています。国としての信用が加速度的に無くなっていると思います

ゼレンスキー大統領は、今回のロシアとの戦いをウクライナにとって、千載一遇のチャンスと捉えているかもしれません

中世以来、ウクライナは虐げられ、何度泣き寝入りをしたか分かりません。ロシアとの戦いに勝利をすれば、逆境の歴史から這い上がることができるかもしれない。大きなチャンスを欧米の力を借りて生かしたいと思っているような気がします。

(「日本経済新聞」)

参考論文…宇山卓栄「ウクライナ人――民族差別と迫害の過酷な歴史」(日本学協会『日本』令和4年6月号 所収)

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