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官僚の綱紀粛正のために十七条憲法を制定――聖徳太子の足跡を辿る(2) / 聖徳太子1400年の遠忌にあたって

女性

「聖徳太子の2回目ということで、昨日の続きをお願いします」

「聖徳太子不在論、聖徳太子は諡名(おくりな)なので、厩戸王とすべしという意見があることを知っていますよね」

女性

「不在論は知りませんが、厩戸王というのは、聞いたことがあります。受験生の立場からすれば、「聖徳太子」を誰もが支持すると思います」

「何となく動機が不純な気がしますが、結果オーライで考えましょうか」

女性

「ただ、別に諡名でも良いと思いますけどね。学会の論文ではないので、個人が特定されれば良いので、歴史的にも社会的にも通っている名前の聖徳太子で良いと思います」

「私もそう思います。現代は通称を大事にしようという流れになってきています。会社でも結婚しても、以前の通称でOKという職場も多いのではないかと思います。厳密に戸籍上の本名でなければいけないという時代ではありません。同じ理屈です。ところで、少し脱線しますが、あなたの職場はどうですか?」

女性

「かつてはダメでしたが、今は大丈夫です」

「そんなことで、諡名で問題ないと思います」

女性

「聖徳太子不在論というのは何ですか?」

「日本書紀に書かれている太子の業績が大変優れているため、そういうことを1人の人間が出来るはずがない、太子に関する記述はフィクションではないかという説が江戸時代からあったことは確かなのです」

女性

「どうして、それが不在論になってしまうのですか?」

「要するに、そういう人がいてはおかしいということになって、不在論が出てくることになります」

女性

「不在だったという確たる証拠はないのでしょ」

「それはありません。あと、不在論を唱える方たちは、聖徳太子は大陸や半島の立場からすると余分なことをしてくれた人物という見方があります」

女性

「要するに、一種の願望から飛び出した説ということですね。ここからが本論です ↓」

 十七条憲法が説く「和」の意味

崇仏論争を解決し、外交問題に目鼻をつけ、残るは国の中心機構を固めることです。聖徳太子は、万感の思いを込めて十七条憲法を世に出します。十七条憲法の第一条は「和を以て貴しとなす」です。これは仏教の受容を巡って、当時国論を二分しての論争と紛争を目の当たりにして、そのようなことをこれからは無くそう、お互い力を合わせて国づくりに励もうというメッセージとして発せられたものです。

そして、もし今後日本の国にとって何らかの危機があった場合は、とにかく衆知を集めることが大事なので、そのことを「夫れ事独り断(さだ)むべからず。必ず衆と論(あげつら)ふべし」(第17条)としたのです。その場合、当然どのように意見をまとめるかが問題となります

和を重視すると、結局多数派の意見が通ることになり、少数派の意見が通らなくなる恐れもあるという批判もありますが、太子は多数決で決めろと言っていません。「上和ぎ下睦びて…」(第1条)とあるように、上の身分の者も下の身分の者も気持ちを合わせ意見を合わせて、国づくりに励めと言っているのです。

かつて東大教授の丸山真男氏が和を大事にすることは、逆に和によって強制されることとなり危険であると述べたことがありますが、太子は権力者の力によって表面的な「和」を整えることを考えていた訳ではありません。中国や北朝鮮の一糸乱れぬ軍事パレード、あれを「和」とは言いません。人々の自由な振舞いの中にも一つの調和があり、そして小さな流れが自然に一つの大河にまとまるように、意見が収斂(しゅうれん)されていく国家の在り方を理想と考えたのです。

(「CAREER PICKS」)

 官僚組織の綱紀粛正をはかる

ただそのような理想を100万回述べても、現実の世界はその通りに動いてはくれません。特に、官僚の頽廃は国の崩壊に繋がります。そういった問題意識から官僚組織の改革を行います。

危機感をもった太子が掲げた政策方針は3つ。1つは、冠位十二階という人材登用の制度を創設し、身分ではなく能力によって人材を登用できる途を開いたことです。その中で注目したいのは、冠位の名称の順番です。儒教の教えの中に四徳と五常(仁義礼智信)というのがあり、それを冠位の名称に使っているのですが、「徳」を入れて順番を変えています(徳仁礼信義智)「礼」と「信」を上に上げて使っているのですが、ここに太子の気持ちが込められています。つまり、礼節をわきまえ、民に信用されるような役人になって欲しいという願いがそこに込められているのです。

封建の身分制の時代に於いて、時代を超越するような人材登用の制度を採用したのは画期的なことです。しかもその能力について、ひとつの規準ではなく、いくつかの規準を設けた上で、それに適う人物であれば身分に関係なく登用したのです。

翻って現在の日本の国家公務員の採用は、ペーパー試験による一元採用です。国家公務員試験の採用1種で合格した者(キャリア組)と2、3種で合格した者(ノンキャリア組)とは、その後の昇進が違います。つまり、最初に受けた試験の種類と点数の結果によって、役人としての将来がほぼ決まってしまうのです

聖徳太子がこの日本の現在の公務員システムを見た時に何と言うでしょうか

点数も大事ですが、それ以外の規準を作って、能力を多面的に捉えるシステムの導入、さらには途中採用者が活躍できるようなシステムを作らないと、新しい組織を作った時に対応できなくなります。そして、つい最近も経済産業省の若手のキャリア官僚がペーパーカンパニーを作って、給付金を騙し取るといった事件を起こしています。聖徳太子が官僚にとって一番大事なのは「徳」と考え、悪しき心が芽生えないような指導と家族的な国家を作ることに腐心をします。

(「アナブレ」/警察の階級、組織の仕組み)

 十七条憲法の裏読みによって分かる当時の役人の頽廃ぶり

太子が掲げた政策方針の残り2つは、役人としての心構えを示し、「主座(天皇)を保つ」ことだったのです十七条憲法の主な名宛人は専ら役人なのは、そういった理由からです

改めて、十七条憲法を紹介します。上手くまとめられた方がいますので、拝借致します。

(ブログ「ねずさんのそとりごと」小名木善行 http://nezu621.blog7.fc2.com/blog-entry-2638.htmlから引用)

【十七条憲法】

  • 「以和為貴」和を以て貴しとなす
  • 「篤敬三寶」あつく三宝(仏法僧)を敬え
  • 「承詔必謹」みことのりを受けては必ずつつしめ
  • 「以禮為本」うやまうことを根本とせよ
  • 「絶饗棄欲」むさぼりを絶ち欲を棄てよ
  • 「勧善懲悪」悪をこらしめ善を勧めよ
  • 「人各有任」人各々任あり
  • 「早朝晏退」朝早く出仕し遅くに退せよ
  • 「信是義本」まことはことわりのもとなり
  • 「絶忿棄瞋」心の怒りを絶ち表の怒りを棄てよ
  • 「明察功過」功過を明らかに察せよ
  • 「国非二君」国に二君なし
  • 「同知職掌」職掌を知れ
  • 「無有嫉妬」嫉妬あるなかれ
  • 「背私向公」私に背き公に向え
  • 「古之良典」古の良典を用いよ
  • 「不可独断」独断不可

本来、規則というのは少ない方が良いのです。どういうことか。何か良からぬことを誰かが過去に行ったので、それを2度とさせないために規則が作られていくからです。「ゴミを捨てるな」と書かれてあれば、過去そこにゴミを捨てた人がいたということです。

十七条憲法をそのように裏読みすると、当時の官僚たちの頽廃ぶりが分かります。天皇の命令を軽んじたり(3条)、仕事の手抜きをしたり(7条、8条)、勝手に税金をとって人を罰したり(5条、6条、11条)、出世をする人を妬んだり(14条)、民を勝手な命令で働かせる(12条、15条)など、かなり乱れた状態であったことが分かります。立派な教えということで読むのも良いのですが、聖徳太子の危機感を少しでも感じ取っていただければ、現代にも共通する問題であることが分かると思います。

「主座を保つ」については、次のブログで書きたいと思います

読んでいただき、ありがとうございました。

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