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国際学力調査(PISA)の新聞報道に接して

  • 2019年12月4日
  • 2020年1月29日
  • 教育論
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世界72の国・地域の15歳が参加した学習到達度調査(以下「PISA」)の結果が出た。日本からは抽出した138校から約6100名の高校1年生が参加した。PISAは「読解力」「数学的リテラシー」「科学的リテラシー」の3分野について行われるが、今回点数的に一番低かった(15位) のが「読解力」であったので、その点に問題意識をもったのだろう。すべての全国紙が(12/14日付朝刊)一斉に大きく報道した。

無題
(読売新聞)

『朝日』『読売』『日経』『産経』『東京』と、主要新聞では『毎日』を除く全社が「社説」で読解力低下について取り上げている。タイトルは「自分の考え育む授業を」(朝日)、「読解力低下に歯止めかけたい」(読売)、「デジタル時代の読解力」(日経)、「情報に溺れない読解力を」(産経)、「読解力育む土壌豊かに」(東京)であった。

『朝日』は「天声人語」や編集委員の署名論文でも扱うといった熱心ぶりであった。
ただ、多くの紙面を割けば良いという問題ではない。全ての記事に目を通したが、総じて現象面を表面的に追いかけて論評しているような記事内容が多かった。

無題

新聞社に求められるのは、現象面から読み取ることができる本質的なこと、そこに国家戦略上問題があれば、それを指摘する必要がある。そして、日本人として他国のことで、その戦略も含めて知っておいた方が良いことなどを記事にして欲しい。逆に、読者は馬鹿ではない。データを見て、普通の能力があれば分かるようなことをくどくどと書く必要はない。

そして、こういった教育問題を扱う場合は、「現場」での受け止め方やどのように対応してきたのか、といったことを読者としては知りたい。その観点から書いた記事を載せたのは『毎日』だけだった。『毎日』は、「現場 地道に底上げ図る」として、私立東京女子学園高校の取り組み、町立西会津中学の取り組みを紹介しつつ、指導教諭や中学校長のインタビューを載せている。

新聞づくりの基本は現場にあると思うのだが、他紙はデータを表面的に分析して、大学教授のコメントを載せるという定番の紙面づくりであった。電話一本でコメントが取れるので、どうしてもそうなるのだろう。大学教授とはいえ、現場を直接知っている訳ではない。説得性があるコメントを簡単に取れるものではない。「学校の成績に無関係なPISAに対しては、生徒は意欲を失っている」(『産経』)と、どこかの大学教授の的外れのコメントを掲載している新聞社もあった。

今回の結果を見て、驚いたのは中国(北京.上海.江蘇.浙江)が3分野でトップ、シンガポールが3分野で2位、マカオがやはり3分野で3位であったことである。好成績を挙げることができた理由を読者としては知りたい。『日経』は「中国、3分野で1位」と見出しをつけて報じていたが、その要因となるようなことについて何も論評していない。そして、その他の新聞社も一覧表を載せて終わっていた。米中の対立が激しくなるような状況である。もう少し気にして欲しい。

そして教育に関する何らかのデータが出た場合、分析しなければいけないのは、どのような指導態勢であったのかということである。指導者の指導力がなければ、生徒の学力は伸びないし、よき指導者をどう育成するかということは国家戦略に関わる問題である。そのような捉え返しの上で、今回の結果を分析的に論評している新聞社は残念ながらなかった。

ここからはあくまでも予想だが、多分どの新聞社も教育についてのプロパー的な記者がいないのだろう。野球に例えると、普通のゴロが飛んできたのだが、練習不足のため慌ててしまって、捕るのが精一杯という感じである。

無題

「思考力を鍛える授業づくりには手間がかる。教員の多忙化で、研修や教材研究の時間がとれなくなっていないか。大学の教員養成課程で新しい教え方を習得させているか。しっかり検証して環境整備に努めるのが、文科省の使命だ」―-―『朝日』の「社説」であるが、殆どトンチンカンである。
文科省の旗振りが悪いので、現場に多忙化などの混乱が生じている。最近では、共通テストでミスをした。「新しい教え方」とは何? 教育は料理を作るような訳にはいかない。そして、環境整備と言うが、日本の小学校から大学までの教育機関に対する公的支出の割合(対GDP比)は2.9%(2015年統計)で、OECDの加盟34か国中で最下位である。そういうことをデータに基づいて指摘して欲しいと思う。

国力を支えるのは経済力と政治力。そしてそれを根底において支えるのが教育力。国づくりは人づくりと言われるゆえんである。国家戦略の観点から、マスコミが教育について真面目に向かい合って欲しいと思っている

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