「今日(11/5)は、大和証券主催のM&Aカンファレンスでニトリホールディングス 代表取締役会長 兼 CEO 似鳥昭雄氏の講演を聞く機会に恵まれました。ニトリは東証一部企業、国内店舗数722、グループ従業員約36,000人、総売り上げ7,169億円です」
「ニトリというのは、創業者の苗字だったのですね」
「私も今日初めて気がつきました。「二兎追うもの…」という故事がありますよね。それに準えて、わが社は「二兎」を追ってみせるという自負心から付けた会社名なのかなと思っていました」
「少し深読みだったということですね。何か収穫はありましたか?」
「事業を成功に導いた人は、必ず何らかの哲学を持っているものです。というか、それがなければ、成功に導くことは出来ないと思っています」
「昨日のブログの話題で言えば、志ということでしょうか」
「ただ、彼の場合は最初からそのような明確なものはなかったようです。最初は30坪の家具屋からスタートしたのですが、いくつか仕事をしたけれど上手くいかず、自分で商売でもやるかということで親戚から100万円借金をして始めたと言っていました」
「商売をやりたかったのですか?」
「そうではなく、消去法で商売に辿り着いたということです。彼は自分で発達障害だと言っていたのですが、対人恐怖症もあったと言っています」
「対人恐怖症なのに、よく家具屋さんをやろうとしましたね」
「だから、最初は上手くいかなかったようです。結婚をして奥さんが社交的な人だったので、そこから商売が軌道に乗ったと言っていました」
「いい人をもらったのですね」
「お見合い結婚だったそうですが、最初の7人は全部断られたそうです。8人目が現在の奥様だそうです」
「あら、最初の7人の人は見る目がなかったのですね。勿体なかったですね。私だったら……」
「あのを、時空を乗り越えた話をしないで下さい」
「すいません、発展する転機は何だったのですか?」
「奥様の人柄もあり店は繁盛して4年後には2号店を出店したそうです。ところが、近くにライバル店が出店したため、売り上げが大幅に落ちてしまい倒産かというところまで追い詰められたそうです」
「何かNHKの「逆転人生」のネタになりそうな話ですね」
「そのタイミングで彼はアメリカに研修に行って目を見開かされたと言っていました」
「常識が変わった一瞬だったのですね」
「当時の家具屋の常識は、店舗を多くしない。5店舗以上にすると失敗するというのが常識だったそうです。アメリカに行って、それは違うということが分かり、アメリカの真似をしようと思ったそうです」
「ここからが本論です ↓」
志をどのように立てるか
志と目標は違うということを前回のブログで書きました。違うことは違うのですが、大きく違う訳ではありません。目標に対して少し視点を変えてもらえれば、志に行き着くこともできます。紙一重みたいなところがあるのです。
例えば、「大リーグで活躍する選手になる」というのは目標ですが、ここに公的な視点を入れます。「大リーグで活躍して、世界の子供たちのために野球の魅力を伝えたい」となれば志になります。紙一重と言えばそうですが、その一重が極めて重要ですし、厚い一重なのかもしれません。
発展する会社とそうでない会社。同じ会社なのに、どうして差が付くのか。考えてみれば不思議ですが、簡単に言えばスタートラインに立ったその時の「差」の違いが大きいと思っています。「少年よ大志を抱け」。この言葉は、企業にも通用する言葉なのです。
企業は必ず目標を掲げます。ただ、その「質」と内容について意識している企業は意外に少ないと思っています。願望を掲げる企業もあります――「100年存続する企業を目指す」。笑う人がいるかもしれませんが、東証一部のある企業が掲げているスローガンです。希望を掲げても、現実がそうなる訳ではありません。存続するための戦略、似鳥氏は30年先の戦略と言っていました。それを立てた上で、それによって社会にどのように貢献できるかを考え、その上で志を立てても良いのです。
(「ウィリアム・スミス・クラーク」)
志はどの時点でも立てることが出来る
志を立てる時期は、何時でも良いのです。何か思うことがあれば、改めて会社として、あるいは個人としての志を立てれば良いだけです。一念発起という言葉があるように、そこからが始まりなのです。一番良くないのは、硬直した考え方に固執して、それしかないと思い込んで、その道を突き進むようなやり方です。それでは何の発展性もありません。
ニトリの志、つまりコーポレント・アイデンティティは「住まいの豊かさを世界の人々に提供する」というものです。
短い言葉の中に、見事に会社と消費者の利益が両立しています。北海道の第一店舗を出した時は、世界のことなど考えることは夢にも思わなかったでしょう。会社の規模が大きくなるに従って、会社としての「志」を立て、それが上手くいったということです。人生と同じで、何回でもスタートラインを引き直して良いのです。
(「ボールドウィンの名言/Yahoo!ショッピング」)
人生も会社も思い立ったところから出発できる
自分でシャットダウンしない限り、何度でも「志」に向かってのスタートラインを引くことができます。その大会で仮に敗れたとしても、次の大会で勝てばいいだけなのです。同じ理屈です。似鳥氏は講演の中で、自分は発達障害だとおっしゃっていました。発達障害というのは、人によって軽い重いがあり、一概に括れないのですが、小学校6年生の時に自分の名前を漢字で書けなかったとおっしゃっていたので、かなり重度な方だと思います。高校受験もすべて失敗したとおっしゃっていましたが、名前ですらその状態なので、後は推して知るべしということでしょう。だから、普通に会社で働こうとしても上手くいかなかったのでしょう。ですが、そこから発想を変え、運を味方にして、現在はニトリのCEOです。
最近、京王線の電車内の「ナイフ放火事件」がありました。仕事も上手くいかず、彼女に振られてしまった。何をやっても上手くいかない。23歳位でもう自分の人生を見切ってしまっています。最初から上手くいく人は、ほんのわずかです。そこをどう捉えるか、ということです。
一番怖いのは自分自身の修正が必要なのに、土台を崩そうという考えを持つことです。革命家の発想です。試合に負けたので、球場そのものを破壊しようと考える輩です。自分ではなく、周りに責任を転嫁してしまうような考えの持ち主だと、修正をしないまま人生が終わってしまう可能性があります。負けたということは何か理由があるのです。それを直さなければ、また同じように負けます。敗戦から学んで、自分の弱点を直して、次なるステージでの戦いに挑みます。
試験に落ちてしまった。そこには、何か原因があるはずです。選挙でよい結果が出なかった。当然、原因があるでしょう。試合に勝てなかった。原因を分析して、弱点を強化すれば、次から勝てるようになります。そういったことを、天の声として聴くことです。そこから発展できます。似鳥氏はお客様の苦情と要望をよく聞くことだと言っていました。
極めて単純なことかもしれませんが、なかなか実行できないことなのかもしれません。人間の行動には慣性の法則が働き、今までと同じような行動を取りがちだからです。深く自覚するということでしょう。
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