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日本の金利はなぜ3%まで上がったのか ―― 3%時代の到来とアメリカからの「利上げ圧力」 / 日本の金利は誰が決めるのか

女性

「長期金利が3%台になったということで、大きなニュースになっていましたね」

「面白いですよね。2.7とか2.9の時にはニュースにしないで、節目の3.0になった途端に大騒ぎをしています。日本人的だなと思っています」

女性

「儀式が好きな民族なので、節目に達すると敏感に反応するということだと思います。ところで、今後も上がるのですか?」

「日銀の金融政策会合が今月の半ばに開かれますが、紛糾すると思っています。アメリカは利上げ圧力を高めるでしょう。ただ、財務省筋は上げたくないと思っているはずです」

女性

「綱引きになるということですね」

「そうなると思います」

女性

「どのような見通しを持っていますか?ニュースでは、さらに金利が上がるようなことを言っていました」

「市場は上がる方向で動いています。それを追認するかどうかですが、「過ぎたるは及ばざるが如し」だと思っています」

女性

「日本経済の状況を見れば、このあたりが適正だということですね」

「もし日銀が9月17、18日の日銀決定会合で追加の利上げに舵を切れば、日本はアメリカの「コバンザメ」になったことが分かります。ぜひ、注目して見ていて下さい」

女性

「ここからが本論です ↓ 表紙は「フィナンシャルフィールド提供」です」

 「思惑・予測・外圧」が押し上げる日本の金利

2人の会話にあるように、金利が3%台に乗りました。金利は様々な要因が複合して動きますが、多くの人の「思惑」「予測」「外圧」が一つの流れを作っています。日本経済は、これ以上の金利上昇に耐えうるような状況ではありませんが、それを乗り越えるような利上げ圧力が生まれているのが現状です。

「思惑」からいきたいと思います。金融政策の司令塔である日銀が利上げの方向に舵を取り始めています。これが一番大きな要因です。アベノミクスの流れの中で、日本銀行は長年、金利を極めて低く抑える超金融緩和政策を続けてきました。これを「正常化」する動きを強めています。2024年3月にマイナス金利を解除して以降、日銀は段階的に利上げを行い、政策金利を1.0%(1995年以来、31年ぶりの高水準)まで引き上げています。これが短期金利を直接押し上げるとともに、将来の政策金利に対する市場予想を通じて、長期金利にも上昇圧力を加えています。

次に「予測」です。高市早苗政権が掲げる「責任ある積極財政」のもと、2027年度の概算要求総額が過去最大の143兆円規模に膨らむ見通しとなり、市場では積極財政によって将来の国債発行額が増えるのではないかとの警戒があります。もちろん、143兆円はあくまで概算要求額であり、そのまま歳出や国債発行額になるわけではありません。しかし、財政拡張への市場の警戒が長期金利を押し上げる一因になっていることは否定できません。前にこのブログで話題にしましたが、そのような動きを受けて、いくつかの信用金庫はかつて購入した低利の国債を損切り、現金化して、今後の対応に備えようとしています。そのような動きが広まれば、国債の利率の押し上げに影響を与えます。

最後の「外圧」は、アメリカです。2026年8月31日、9月1日にかけてアメリカのノースカロライナ州でG20財務相・中央銀行総裁会議が開催されています。そこでベッセント財務長官が片山さつき財務大臣、および日銀の植田和男総裁とそれぞれ個別に会談を行い、日本に対して非常に踏み込んだ発言をしていたことが判明しています。事実上の圧力であり介入があったことは確かです。「日本は独立国です」と言ってはねのける必要があるのですが、そういう問題意識は当事者にもマスコミにもないようです。

(「静岡新聞」)

 三つの「利上げスイッチ」が、なぜONになったのか

「思惑」「予測」「外圧」について、見てきました。今まで、どうして金利が動かなかったのかと思っている人がいるかもしれませんが、日銀が低金利政策をとり、政府が財務省の緊縮財政の意向を受けた政策を行い、アメリカは特に日本の金融政策に容喙(ようかい)しなかったからです。要するに、3つの利上げスイッチがここに来て、OFFからONに一気に押されたかたちになったのです。そして、この3つのスイッチのうち一番強力なのが、アメリカの圧力だと思っています。

各種報道によると、ベッセント氏は、現在の円相場が「大幅に過小評価されている(実力以上に安すぎる)」との認識を提示し、これが日本国内のインフレ圧力を高める一因になっていると厳しく指摘しています。そして、日本側に対し、次の適切な政策ステップとして「利上げに向けた明確な道筋を市場に示すこと」や、財政の持続可能性をアピールすることが必要だと迫りました。他国の金融政策に対してここまで具体的に注文をつけるのは、非常に異例の介入(外圧)と言えますが、マスコミは何もそのことについて報じていません。アメリカに抑え込まれていると思っています。

ベッセント財務長官は、市場に自ら介入してでも金利をコントロールしようとする「介入主義者」として知られています。トランプ大統領にとって、使い勝手が良い人だと思います。トランプ大統領は一貫して、過度な「ドル高(他国通貨安)」が米国の製造業を弱体化させ、巨額の貿易赤字を生んでいると批判しています。それを解消するためには、日本が金利を上げて円高誘導をする必要があると思っています。トランプ大統領のそのような意を受けてベッセント氏は動いているのです

(「ABEMA」)

 日本への利上げ要求に透ける「米国第一主義」

今回の植田総裁や片山財務相への強い働きかけを、単に「日本のインフレを心配した親切な助言」と受け取るのは素朴すぎるでしょう。トランプ政権には、過度なドル高を是正し、米国製造業の競争条件を改善したいという明確な政策的利益があります。11月に中間選挙を控えるトランプ政権にとって、これ以上の米金利上昇(住宅ローンや自動車ローンの高騰)は有権者の反発を招くため、絶対に避けなければなりません。非常に冷徹な「米国第一主義(アメリカ・ファースト)」のロジックに基づいていることは確かです。

現在のアメリカの財政状況ですが、米議会予算局(CBO)は、2026年度の連邦政府の純利払い費が1兆ドルを超えると見込んでいます。1ドル160円で換算すれば160兆円を超える規模です。このまま大量に国債を発行し続けると、市場の金利(国債利回り)が上がります。金利が上がると、アメリカの一般国民の住宅ローン(現在7%前後)や自動車ローン、企業の設備投資の金利も連動して上がってしまいます。つまり、「政府の財政赤字のせいで、民間の経済活動が窒息しかけている」というのが現在のトランプ氏らの問題意識なのです。そして、トランプ氏は、「他国(日本やヨーロッパ、中国)だけが通貨安(円安など)で不当に得をして、アメリカの富(製造業の雇用)を奪っていく構造の是正」を訴えているのです。

言っていることや考えは分かります。そして現時点で円安と輸入インフレへの対応という点では、日米の利害が現在たまたま一致している側面もあります。しかし、それと米財務長官が日本の金融政策の方向にまで踏み込むことの是非は別問題です。ベッセント財務長官が日本に利上げを求めているのは、アメリカが自国の財政・金融をハンドリングしやすくするために、外の世界(為替や他国の金利)を調整しようとする「自国都合のコントロール」だからです。これに何も問題意識を持たないようでは、マスコミ関係者は失格だと思っています。つまり、この問題は日本の金融政策の自主性、言い換えれば「政策主権」の問題だからです。

金利も為替も、本来は一国の経済政策の根幹に関わる問題です。日米の利害が一致している間は、アメリカからの要求も「助言」や「協調」として受け入れることができるかもしれません。しかし、これからも両国の利害が常に一致する保証はありません。

問題は、利上げするか、しないかだけではないのです。日本の金融政策を日本自身の経済状況と判断によって決めることができるのか。その政策決定の自主性こそ、今回のベッセント発言を通して考えるべき問題ではないでしょうか。ぜひ、その観点から、9月中旬に開かれる日銀の政策会合を見て欲しいと思います。

(「朝日新聞」)

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