
「失礼ですけど、あなたは恋愛結婚ですか?」

「一応、そうですね……。職場結婚です」

「そういう縁があって、良かったですね」

「そうですね。特に、結婚願望はそんなにありませんでしたから、……。今の主人に出会えなかったら生涯独身だったかもしれません」

「結局、結婚をすべてそういう偶然に任せてしまうようになったことが、選択の幅を縮めて、非婚率を高めることになったと思います」

「お見合い文化というのは、考えてみれば良いシステムなんですね」

「他人から見て、誰と誰なら合うということが意外と分かるものです」

「お見合いの方が離婚は少なかったと思います」

「成る程、そうでしょうね。いろんな繋がりの中で結婚をしていますからね」

「当たりはずれは少ないでしょうね」

「ここからが本論です ↓ 表紙写真は「ニッセイ基礎研究所」提供です」
結婚を「個人任せ」にした社会
かつての日本における結婚は「個人の自由な恋愛の結実」ではなく、地域、家業、技術、コミュニティを次世代につなぐための「社会的なシステム」でした。地域や職場の共同体が、個人の「恋愛力」に関係なく、社会的・組織的にマッチングをセッティングする。これはある意味、極めて機能的なシステムでした。
結婚にいたる面倒な駆け引きや、お互いのスペックの探り合いを共同体が担保・仲介してくれました。地域の技術や商売、農地を「代々つなぐ」という明確な目的があり、結婚はそのための最も重要な手段だったのです。このような社会的な仲介システムも、日本が長く「皆婚社会」を維持する上で重要な役割を果たしていたと考えられます。一昔前は「結婚して一人前」と言われていました。結婚して家庭を持つことが、自分が世話になった地域社会に対しての義務と考えられていたのです。
そのような観念は、地域が共同体の機能を低下する中で消えていきました。共同体のサポートを失った若者は、自力で相手を見つけ、自力で人間関係を構築しなければならなくなりました。家族ですらサポートをすることがなくなってきています。急に梯子を外され、「完全なる自由恋愛市場」に放り出されてしまいました。当然、戸惑いや動揺が社会的に発生することになります。これが現在の非婚化を促している重要な要因の一つではないでしょうか。

(「note」)
少子化対策を「共同体再生政策」へ
雇用が安定するとか、経済的に自立するといった面も重要かもしれませんが、問題の核心はそこではありません。どれだけ手取りが増えても、「かつて共同体が担っていたマッチング機能や、結婚を必要とする社会構造(家業や地域の継承)」が消滅している以上、自然に婚姻率が戻ることはありません。
「共同体を維持するために結婚という手段が使われていた」というシステムが消えた今、私たちは「個人の自由」を獲得する一方で、社会全体として次の世代を育み、社会を持続させる力を失いつつあります。これは単なる雇用対策や少子化対策で解決できるレベルを超えた、「日本社会の持続可能性そのものに関わる問題」と言えるかもしれません。
かつての共同体とお見合い文化が崩壊した現代において、「地域や家業の継承」とは異なる、新しい形での「人と人をつなぐ仕組みや、結婚を選択する新たな動機(大義名分)」を今の日本社会に作り出さないと国そのものがなくなる可能性が高くなります。原点に帰るか、新たな共同体を構築するしかありません。しかし、「人間のつながりや価値観(共同体)」は、給付金を配ったり減税したりといった経済対策によって修復できるものではありません。
要するに、国や有識者会議が「制度の改変(地方分権など)によって新しい価値観や大義名分をデザインする」というマクロな国家観を持っておらず、現在の「中央集権・東京一極集中」のフレームワークを維持したままで、帳尻を合わせようとするために、解決のための妙案が生まれないのです。結局、根本的な原因の一つである「地域共同体の衰退」と、その背景にある中央集権的な国家運営を直視することなく、そのフレームの中で「お金を配る」という近視眼的な対症療法を繰り返すことになります。そのため、根本的な解決に向かって動くことは決してありません。

(「Yahoo!ニュース -Yahoo! JAPAN」 )
沖縄・島嶼地域から始める「共同体再生特区」
どうすれば良いのでしょうか。全国一律ではなく、ある特定の地域で実験的に共同体再構築の政策を実行すべきでしょう。上手くいけば、それをモデルケースにして、全国に広めれば良いからです。ある特定の地域(自治体)が国に先駆けて「完全な分権と、郷土維持のための新たな共同体マッチング」を制度化しようとした場合、既存の中央集権的な壁(国の規制や税制など)を突破するために、どの地域(自治体)が最適でしょうか。私は、沖縄が良いと思います。
沖縄には多くの島々があります。島嶼地域には、中央集権の波に洗われながらも、本土の都市部では完全に失われてしまった「ゆいまーる(相互扶助)」に代表される共同体意識や郷土愛が生活の基盤として今なお息づき、「島全体の持続可能性」と直結しています。そんなこともあり、沖縄は長年、全国1,2位の高い出生率を誇ってきました。ゼロから共同体を作るのは不可能に近いですが、「基礎地盤」が残っている島嶼地域であれば、少しの制度的な後押し(支援)によって、その共同体システムを現代版にアップデートすることが容易です。
島の経済や文化(伝統工芸、農業、観光、漁業など)を次世代につなぐための担い手育成を、島全体のコミュニティが「家」や「お見合い」に代わる組織的マッチングとしてバックアップする体制をつくります。国からの補助金ではなく、島独自の税制や就労支援のルールを認め、若者が「この島を維持するためにここで家庭を築く」ことへの誇りと経済的メリットを同時に担保します。このアプローチの最大の強みは、「目に見える成功例」がコミュニティ単位で誕生することです。もちろん、これはかつての「家」や地域共同体による結婚への圧力を復活させるものではありません。結婚するか否か、誰と結婚するかは、あくまで本人の自由意思によって決められなければなりません。再構築すべきなのは昔の価値観ではなく、かつて共同体が持っていた「人と人をつなぐ機能」なのです。
島という閉じた空間で「共同体の力で次世代を繋ぐことに成功した」という実績ができれば、それは都市部の冷めきった社会に対しても「人間が本当に求めていたつながりや安心感はこれだ」という強烈なオルタナティブ(代替案)として響くはずです。それを今度は、本土の「山間部の集落」や、あるいは「都市部の特定の地域コミュニティ」へと、それぞれの地域の文脈に合わせて段階的に移植していく。これもまた、人口減少社会を乗り越えるために試みる価値のある「社会的イノベーション」の一つではないでしょうか。そのような「実験」をするためには、国の特別な協力が必要です。教育・経済特区を設定して、住民の目が自分の地域に向かうような措置を取るのです。
少子化対策とは、子どもが生まれてからお金を配る政策だけではありません。その前に、人と人が出会い、地域とつながり、そこで家庭を築き、次の世代へ何かを引き継ぎたいと思える社会をつくる必要があります。かつての共同体に戻ることはできません。しかし、共同体が担っていた機能を現代にふさわしい形で再構築することはできます。少子化は「お金」の問題である前に、社会の「つながり」の問題なのではないでしょうか。

(「株式会社 レキサン」)
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