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「静かな退職」が広がっている ―― 帰属意識を高めるために企業は努力を / 管理職は「社員目線」で社内を見ることが大切

「「静かな退職」という言葉を聞いたことがありますか?」

女性

「勝手に会社を辞めてしまうことですか?」

「私も一瞬そういう意味かなと思ったのですが、そうではなく、実際に退職しなくても、まるで退職したかのように存在感を出さず、ただ最低限の仕事しかしないことだそうです」

女性

「どの会社でも1人や2人はいると思いますけど……」

「そういった方が、コロナ禍を境に増えているそうです」

女性

「どうしてですか?」

「発祥はアメリカで、コロナウイルスの脅威にさらされる中で、人生とは何か、働くことがすべてなのかといった根源的な問い掛けが働く人たちを覆ったと言われています」

女性

「日本人は、そういった海外の考えにすぐに感染する傾向が強いですからね」

「海の向こうから来るものは、すべて光り輝いて見えるのでしょうね。七福神が乗っているのは宝船ですからね。あのようなイメージだと思います」

女性

「いろんな考えに触れるのは良いことだと思いますが、染まりたくないという気持ちは常に持っているつもりです」

「取捨選択が大事でしょうね。とにかく、「静かな退職」は、人間関係が希薄になっているということと関係があるのでしょうね。」

女性

「ここからが本論です ↓」

 日本人の仕事に対する満足度が低くなっている

マイナビ(東京・千代田区)の「正社員の静かな退職に関する調査2026」によると、「静かな退職」を自認している人は、「そう思う」と「ややそう思う」を足して46.7%に上ります。年代別でみると、その割合が一番多いのが20代で半数を超えています。一番少ないのは40代ですが、それでも「そう思う」と「ややそう思う」を足した数値は40%ですので、年代ごとの開きは大きくはありません。

モーレツ社員という言葉が高度経済成長期に生まれ、つい最近は、働き方改革ということが言われていたので、一心不乱に働く日本人が多いのではないかと思い込んでいましたので、このデータはある意味、衝撃的でした。特に日本の場合は、欧米のジョブ型雇用とは違って、メンバーシップ型雇用がまだ主流です。つまり、全体の力で仕事をこなしていく形態なので、個人のやるべき最低ラインが曖昧です。サッカーで言えば、フォワードであっても臨機応変に守備に回ってカバーするようなチームが強いように、企業も全体を見て行動できる社員が多くいることが重要です。

しかし、そのような状況にはなっていないことが分かります。リクルートワークス研究所が「仕事に対する満足度」の調査をしています(「Global Career Survey2024」)。それによると、日本は欧米各国の社員と比較すると、仕事に対する満足度が男女ともに低いです。欧米各国の社員は総じて80%くらいの満足度を示しているのに、日本の場合は50%に届いていません。ここに来ての急速なパーセンテージの低下、原因は一体何でしょうか。

(「TBS NEWS DIG-TBSテレビ」)

 アメリカでは「ビロンギング」という工夫がされている

念のため、別の調査会社のデータを見てみることにします。リクルートパートナーズリサーチセンターが全国の15~64歳の就業者を対象に実施した調査によると「職場に自分の居場所がある」との回答は54.9%であり、2013年と比較して11.3%の減になっています。年代別では、30~50代の働き盛りの世代の落ち込みが目立っています。

「居場所」というのは、自分を受け入れてくれる人間関係のことです。農耕民族のDNAを受け継いでいる日本人は、同僚や上司との人間関係・信頼関係を気にする傾向があると思いますが、会社が生産性を上げようと思うならば意識的に「居場所」を作る努力をする必要があります。そのことが働き甲斐をもたらし、ひいては生産性の向上に繋がるからです。

アメリカでは「ビロンギング」(Belonging/帰属意識)と呼ばれていますが、一人ひとりの従業員の「居場所」を確保する施策です。コロナ禍を機にリモートワークが広がり、従来よりオフィスや同僚との距離も広がってしまいました。それをカバーするための施策です。具体的には、社内旅行や運動会などの催し物を計画したり、大小様々な表彰制度を設けたりするなど、社員のモチベーションを高め、会社としての一体感が持てるようなことを導入しています。

(「Cultive/カルティブ」)

 日本の企業は社員の帰属意識を高めるための努力を

日本の高度経済成長期には、社内慰安旅行が定番でしたが、現在では流行らなくなっており、衰退傾向だそうです。帝国データバンクなどの調査によると、企業の社員旅行の実施率は約3割にまで落ち込んでいます。「全員強制参加で、夜は大宴会」といった昔ながらの慰安旅行は、男性中心社会の発想なので、若い世代や女性社員を中心に強い抵抗感を持つ人が増えているためです。そういう中で完全に廃止する企業がある一方、新たなイベントを考える企業もあるようですが、数的には少ないのでしょう。結局、そのような努力不足が各種のデータに表れていると思われます。

逆にアメリカの企業(J.P.モルガン、KPMG、AT&Tなど)では、帰属意識を高めるために「ERG(Employee Resource Group)」という社内コミュニティを結成して社員交流が深まるような取り組みをしています。社員が自主的に結成したサークルに対して、会社は予算と役員を付けて応援する仕組みです。バトミントンやバスケットといったスポーツサークルもあれば、読者会、文化体験クラブといったものもあります。会社役員が顧問のような役割です。会社役員をわざわざ付けるのが重要なのです。

そのようなイベントやサークルが難しいという会社があるかもしれません。その場合でも、少しの工夫で帰属意識は高まります。例えば、毎日の始業前の「5分」を使った工夫です。本題に入る前に、全員が「今の自分の状態(楽しみにしていること、不安なこと、体調など)」を1言ずつ話すのです。業務以外の「その人のプライベートや今の感情」をチーム全員で一度受け止めてから仕事を始めることで、「仕事マシーンとしてではなく、一人の人間として歓迎されている」という感覚(ビロンギング)が日常的に醸成されます。それだけでも、職場の雰囲気が随分変わるものです会社の幹部の方は、企業は従業員が集まって仕事をして利益を出すところと単純に考えないことです。小さな工夫、ちょっとしたアイデァが社員を生き返らせ、企業の発展の礎をつくり、それがひいては日本経済を支えます。

【参考記事】・「静かな退職なぜ広がる?」(『日経』2026.6.22日付夕刊) ・「職場に居場所ありますか」(『日経』2026.6.9日付)

(www.carefit.org)

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