
「日本は多くの島々に囲まれているような国ですが、島の数がいくつあるか、御存じですか?」

「瀬戸内海の島々や、人が住めないような島も入れてですよね。いくつでしょうか……? 1万あるかないか、くらいですか?」

「国土交通省の資料によると1万4,125あり、そのうち人が住んでいる有人島は417島だそうです」

「島の総数の割には少ない印象を受けますが、明治以降に無人化した島の数はどのくらいあるのですか?」

「実は、政府や自治体による一括統計がありません。市町村合併や国勢調査の記録に曖昧なものがあるためだそうです」

「アバウトな数で良いのですが……」

「明治以降と言いますが、実際には高度経済成長期以降に住民全員が島を離れて無人化したパターンが多いそうです。少なくとも、120~150島以上存在するだろうと言われています」

「その1つに、軍艦島がありますよね」

「長崎県の軍艦島ですね。炭鉱の閉山に伴って、1974年に住民全員が退去して無人島になりました」

「関心がある方は「無人島化した離島一覧」というサイトがありますので、よろしければ訪問して下さい。ここからが本論です ↓表紙写真「国土交通省」提供です」
人口減少の「15年先」を走る日本の離島
日本の有人離島417島の総人口は、この10年間で約10%〜15%減少しています。日本全体を大きく上回るスピードで少子高齢化と人口減少が進んでおり、いわば「日本の人口減少の未来を15年先取りしている状態」と言われています。若者が就職や進学を機に島外へ流出する「社会減」に加え、高齢化率が約37%に達しているため出生数より死亡数が多くなる「自然減」が主な要因です。
離島経済新聞社が『季刊ritokei』を発行していますが、それによると「離島は1950年代半ばから一貫して減少し、70年間にわたり厳しい現実と向き合い続けてきた人口減の先進地」であり、「2010年と2015年という、たった5年の比較でも、離島全体で約9%減」ということで、全体的に見れば厳しい状況が続いているとのことです。
離島の人口減少が全国の未来に直結します。島が無人化すれば直ちに領海やEEZを失う訳ではありません。しかし、漁業、海洋調査、領海警備などの活動拠点としての機能が弱まり、結果として領海・EEZを実効的に管理していく上で大きな問題が生じます。日本政府や各自治体は、まさにその強い危機感を共有し、法改正や先端技術の投入など、国を挙げた具体的な政策を採用してきました。そのような中、新規事業の創出や事業拡大(「有人国境離島法」の利用)、日本人学校の創設や学校建設など様々な工夫によって、転入者や人口が増える島も存在するのです。

(「信濃毎日新聞」)
「離島振興」から「国境を守る島」へ
戦後すぐの1953(昭和28)年に離島振興法が議員立法によって制定されました。戦後の日本が本土を中心に急速な復興を遂げる一方で、海で隔てられた離島は完全に置き去りだったのです。電気や水道といった基本ライフラインが十分ではなく、船が接岸できない未整備な港もあり、産業も生活環境も極めて低い水準(後進性)にありました。そのようなハード面のインフラを整備することが最大の目的だったのです。
2022年には、離島振興法の改正法が、やはり議員立法によって成立しました。離島に対する国の問題意識のレベルを示すものとなりますので、その内容を見てみることにします――①副業やリモートワークなどで継続的に島に関わってくれる島外の人材(関係人口)の活用、②生活環境(医療、買い物、移動など)を維持するための特別配慮や努力義務の新設、③超高速通信網の維持管理(ドローン、DX)、④再生可能エネルギーの導入拠点、離島留学などへの財政支援。
また、「有人国境離島法」は、離島振興法の延長線上にありながら、その中でも特に国境離島について、領海・EEZの保全と地域社会の維持という安全保障上の目的を前面に押し出した法律です。「国境の島から人がいなくなれば国家の主権(領海やEEZ)を守れなくなるため、国費を大量に投入してでも住民を定住させる(防衛・国益)」という100%国家の主権維持が目的です。全国417の有人離島すべてではなく、他国と接する最前線にある77島(対馬、壱岐、五島、隠岐、奄美、種子島、屋久島、佐渡、奥尻、礼文、利尻、伊豆・小笠原諸島など)だけを「特定有人国境離島」として特別指定し、予算も付けて対応しようという考えです。
この法律は2017年に10年間の時限立法としてスタートしましたが、国際情勢の緊迫化や島の過疎化のスピードを受け、2026年7月に大幅な法改正が行われました。今回、北海道の天売島・焼尻島、山形県の飛島、東京都の新島・式根島、新潟県の粟島の計6島が新たに指定に追加される等の措置がとられました。法案は、ほぼ全会一致で成立しました。共産党から自民党までが本会議で席を並べて賛成票を投じる光景は、通常の法案審議ではあまり見られないことですが、党派を超えて必要性が共有された法案だったことがうかがえます。

(「長崎新聞」)
15歳と18歳の「島立ち」をどう止めるか
以上、見てきたように国もそれなりの対策をしていますが、特定有人国境離島(全国15地域・77島)の人口減少のスピードは、日本全体の人口減少ペースを遥かに上回る速度で進行しています。国境離島の指定地域の総人口は、1955年(昭和30年)には約62万人いましたが、現在は26万人を下回る規模(半数以下)にまで落ち込んでいます。結果的に見ると、対策があまり効果を上げているとは言い難いと思います。なぜでしょうか。原因にマッチした対策ではないからです。そもそも何故人口減のスピードが早いのでしょうか。最大の理由は「15歳(高校進学)」と「18歳(就職・大学進学)」のタイミングで、若者が島から大量に流出するためです。対策は、ここに焦点を当てる必要があります。
まず、高校です。特定有人国境離島77島のうち、高校が設置されているのはわずか14島(全日制分校を含む)です。これを何とかしないといけないと思います。島に高校がない場合、15歳の子どもを一人で本土へ出すか、それを心配して「家族全員で本土へ引っ越す」という選択(家族単位の島立ち)が頻発します。高校が存在することは、子育て世代が島に踏みとどまるための「防波堤」になるのです。通常の学校設置基準や生徒数による「効率性」だけで判断せず、国境離島の高校を教育施設であると同時に「国土保全インフラ」と位置付けるのです。その後「離島留学」を呼び掛けたり、ICT(遠隔授業)を利用しての単位を認めるなど様々な努力と工夫で存続をはかるのです。
島に仕事(就職先)がなければ、どれだけ教育環境を整えても18歳で再び島を離れてしまいます。だからこそ、国が“中央集権国家の腕の見せ所”として、島嶼特区に対する圧倒的な税制優遇(「国境離島版・経済特区」)を敷くアイデアはどうでしょうか。「島内で一定数以上を常用雇用し、島に本社や主要拠点を置く企業は、法人税を5年間免除する」といった破格の優遇策を敷けば、最先端のIT企業や、再生可能エネルギー企業、さらには国防・宇宙関連のベンチャー企業などが、こぞって島に進出・起業するのではないでしょうか。
現在、ネット環境さえあればどこでも仕事ができる時代です。「法人税が日本で一番安い国境の島」というブランドを作れば、国が多額の補助金を出し続けなくても、民間企業の力で最先端のオフィスが立ち並び、高年収の若い世代が島に定住して税金を納める(地方消費税など)自立した好循環が生まれます。とにかく、原因に的を当てた対策を具体的に実施しなければ、効果はありません。
離島は、日本の人口減少の「最後尾」ではありません。むしろ、日本全体がこれから直面する問題の「最前線」です。ここで人口減少を押し戻す方法を見つけることができれば、それは地方都市や中山間地域を再生するモデルにもなります。離島政策は、島だけを救う政策ではなく、日本の人口減少を食い止めるための実験場でもあるのです。

(TBS NEWS DIG-TBSテレビ)
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