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「円安」が映し出す日本経済の弱点 ――「勝てる産業」を育てる国家戦略へ / アメリカとの産業競争力の差から考える日本再生

女性

「前回のブログで「失われた30年」の理由が分かりました。なぜ、きちんと解明して、それを報道しないのでしょうか」

「日本人の悪いクセが出ていると思います。都合の悪いことは報道しない、そして触れようとしない。戦前からの体質をそのまま受け継いでいるところがあります」

女性

「そうすると、新聞報道は事実の羅列になります」

「実際に、表面的な現象だけを報道して、なぜそうなったのかという因果関係に触れるような記事が殆どありません。また、戦前はミッドウェー海戦以降は敗退を繰り返しましたが、国民にはまったく知らされていませんでした」

女性

「自由主義のチャンピオンであるアメリカが、実は歴史上最も成功した「官主導の国」であったという事実を初めて知りました」

「正確に言うと、軍・官主導です。1990年代からメタ、アルファベット、グーグル、エヌビディア、テスラといった企業が雨後のタケノコのように急激に成長して世界の巨大企業になったカラクリが分かったと思います。要するに、軍・官・民が協同して技術を開発し、国が起業化を応援したのです」

女性

「よく分かりましたが、本来は新聞やマスコミがきちんと報道して、日本もその手法から学びましょうと呼び掛けるべきでしょうね」

「インターネットやスマートフォンに使われているGPS、タッチパネル、音声認識(Siriの原型)などはアメリカ国防総省の研究機関が軍事研究として開発したものです。それを民間が商品として開発しています。朝日、毎日、東京といった左翼系新聞がそういうことを言うはずがありません」

女性

「そうでしょうね」

「日経は財務省の機関紙のような新聞ですし、産経は経済に関しては社内で意見が割れています」

女性

「意見が割れているというのは?」

「1%消費減税について賛否割れています。社説では批判意見が書かれ、賛成の論説委員は論文を掲載しています」

女性

「部数がどの新聞社も減らしていますが、そういった報道に対する批判もあるのでしょうね」

「ここからが本論です ↓表紙は「マネーセミナー」提供です」

 円安が突きつける「日本経済の弱さ」

かつては円高に泣かされ、今は円安に泣かされています。円高の時期に“ドル買い円売り”をしたため、日本の外貨準備高の最新残高(2026年6月末時点)は1兆2,874億7,600万ドル(約200兆円強)あります。額としては、世界第2位の外貨準備高を誇り、内訳は下の表の通りです。なお、為替介入にあたっての会計処理は通常の国家予算の一般会計とは区別した上で、「外国為替資金特別会計(外為特会)」によって処理されています。

資産の種類 残高 介入の使いやすさ
外貨有価証券(米国債など) 約9,286億ドル 米国債など。必要に応じて売却して介入原資にできる
外貨預金(ドルの現金) 約1,619億ドル 流動性が高く、利用しやすい
その他(金・IMF信託など) 約1,970億ドル 通常の為替介入には使いにくい

外貨有価証券として約9,285億ドル(約140兆円)あります。俗に「埋蔵金」と言われたりする資金です。円が高い時に調達した外貨資産を売却した運用収入は一般会計に繰り入れることができますし、過去にもそのように処理されてきたことがあります。巨大な外貨資産を抱える外為特会を含め、政府全体の資産・負債をどう国家戦略に位置付けて、ファンダメンタルズの強化のために、いかに有効的に使うかを考えるべきだと思います。というのは、この間の円安には日米金利差など複数の要因が絡んでいますが、基本的には日本とアメリカの成長力・産業競争力の差が大きな原因として引き起っている現象だからです。

なぜアメリカ経済が強くなったのかということについては、前回のブログに書いた通りです。一言で言えば、軍・官・民一体となった研究開発態勢を政府が資金面や整備面でサポートしたからです。一方、日本では研究や商品開発は各企業ごとに行われ、先端の研究や製品開発であっても必ずしも国からの補助金が出るとは限りませんでした。ましてや、国が先導役になって産業基盤の整備をすることもありませんでした。一つのイノベーション開発に莫大な予算が必要な時代となりました。それを企業にだけ任せる訳にはいかないのに、従来的な対応であったため、出遅れてしまったのです。

(「東京新聞」)

 日本はなぜ「勝てる産業」を育てられなかったのか

日本の場合は、その拠って立つ経済理論の問題があります小泉政権以降、日本では規制緩和や構造改革、市場機能の活用を重視する政策が採用されました。安倍政権では財政政策や成長戦略も加わりましたが、国家が研究開発から事業化までを長期的に主導する産業政策は、十分に構築されたとは言い難かったと思います。一方、アメリカが実際に構築してきた産業・科学技術政策は、結果としてシュンペーターの『新結合』を国家レベルで実践したものと見ることができます。従来の経済循環理論では、経済を効率的にまわすことは出来ても発展させることはできないと説きます。イノベーションをいかに起こすかを考えることが重要なのです。

文明のレベルが上がれば上がる程、価値あるイノベーションを生み出すためには、一企業では賄いきれないくらいの莫大な費用と多くの高度人材が必要ですその問題をクリアするためにアメリカが選んだ方法は、産学官連携をさらに加速させ、大学の研究成果を事業化に結び付けることでした。その重要な制度的転換点の一つが1980年の「バイ・ドール法」でした。当時のアメリカ経済の惨状を憂いて、民主党と共和党の議員2人が共同提案した議員立法です。内容については、前回のブログで紹介した通りですが、「大学の研究成果+起業精神+国の資金」という「新結合」を生み出すものでした。

世界企業の時価総額ランキングというのがあります。1989年時点でトップ50の中に日本企業が32社入っていました。ところが、その30年後の2019年には、わずか1社トヨタ自動車のみという状態です。米中のIT企業に大きく引き離され、こうした企業競争力の低下は「失われた30年」を象徴する現象の一つです。その原因分析が様々な観点から行われ、一般的に言われているのが、金融・経済政策の誤算、産業構造の変化への乗り遅れ、人口動態の急激な変化といったものです。要するに、外部環境の予想外の変化があったため、ということで主体的な責任を回避した総括に終始しています。これでは、充分とは言えず、そのため、教訓が導き出せていません。

話を分かり易くするために、野球に例えてみます。なぜ日本チームが勝てなくなったのか。アメリカチームとは5回コールド負けをするようなレベルの差が生まれています 打撃力(イノベーション)、投手力(基礎研究・科学技術)、守備力(産業基盤)、育成システム(教育・人材育成)、スカウティング(世界の技術動向の分析)といった分野がありますが、総合力で大きく水をあけられています。

そして、問題は選手の能力だけではありません。どの選手を育て、どのポジションを強化し、5年後、10年後にどのようなチームをつくるのかという球団経営そのものに差がついてしまったのです。そして肝心の監督・コーチ陣はどうなのか。様々な補強をするために資金が必要ですが、資金をめぐってコーチ(省庁)と監督(首相)との見解が対立しています。監督は融資を受けてでも必要資金を捻出すべきと考えているのに、コーチ陣は様々な部署の支出を見直して、必要な資金を捻りだすべきだと主張します。そこの見解を一致させる必要があります。

(「note」)

 「勝てる日本」をつくる国家戦略・経済政策へ

融資は何の例えか分かると思いますが、国債をどのように捉え、どう使うかということです重要なのは国債残高そのものではなく、国債によって調達した資金を何に使うかです将来の生産力を高める研究開発、人材育成、科学技術、社会基盤への投資と、単なる経常的支出とは区別して考える必要があります。そして、積極的な経済活動をする途上で発行した国債は、日本経済が伸びる上での必要な発行であると考えれば良いと思います。「国債=借金=悪」というのは、かなり一面的な捉え方だと思っています。

そして日本国債の保有者の多くは日本銀行や国内の金融機関、保険会社などで、保有率は約87%です。米国や英国の国債は海外投資家が約30%を保有しており、それらに比べると日本国債の海外保有比率はかなり低い水準だというのが分かります。国債の保有割合が問題なく、しかもそれが市場で消化され、特にインフレなどの現象が起きていない限り、必要であれば発行をして日本チームの強化のために使うべきだと思います。

なお、投資というのは、必ずしも最初から成果が上がるものではありません。最初は研究費や開発費にお金がかかりトータルが赤字になることもあります。ただ、あくまでも目標は勝てるチームを作ることです。必要ならば、余分に資金を投下して強化する部門もあるかと思います。プライマリーバランス(PB)は、あくまでも結果なので、それの黒字化にこだわる必要はありません。「PBの黒字化は最低限の目標で、民間が経済の先頭に立つ前提だ」(「日経社説」2025.11.23)と言いますが、民間が先頭に立ってイノベーションを起こすことが難しい時代になったことを認識すべきだと思います。

円相場だけを見て円安を止めようとしても、根本的な解決にはなりません。必要なのは、世界から資金と人材を引き寄せる産業を育て、日本経済そのものを強くすることです。打撃力を高め、投手を育て、守備を鍛え、優れた若手を育成する。そのためには、監督とコーチが同じ戦略の下で動かなければなりません。財政・科学技術・教育・産業政策を一つの国家戦略として組み直すことが重要です。

為替介入は守備です。金融政策も守備的な側面があります。しかし、研究開発、科学技術、人材育成、産業育成は「得点するための攻撃」です。日本は長い間、円相場に気を取られてその数値だけを見つめた議論をしてきましたが、本当に考えるべきことは「円を守る」のではなく「円を支える経済をつくる」こと、つまり「世界が円を持ちたいと思うだけの経済をどうつくるか」でなければいけないのです。――そこにサナエノミクスの成否もかかっているのではないでしょうか

(「映画.com」)

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