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「いいね」の時代を生きる子どもたち ―― 脳科学とアイデンティティ教育から考える青少年保護 / SNS依存を防ぐために家庭と学校ができること

女性

「子供のSNS使用を規制する動きが世界で広がっているようですね」

「オーストラリアやアメリカは、16歳未満の一律禁止を打ち出しています」

女性

「日本では規制の動きがあるのでしょうか?」

「こども家庭庁などが2025年末から検討会(ワーキンググループ)を開始し、法整備を視野に動いているそうです」

女性

「親としては、オーストラリアのように一律禁止の措置を取って欲しいと思っています」

「状況的には、一律の年齢制限による禁止は見送る方向で、プラットフォーム事業者(SNS企業)への年齢確認の厳格化という方向で進んでいるようです」

女性

「日本的と言えば、日本的ですね」

「各国の様子を見ながら、落としどころを探るという感じですね。そして、子供の行動を規制するのではなく、事業者側にフィルタリングをかけさせるなど、そちらに縛りをかけてくると思います」

女性

「携帯電話については、フィルタリングの義務付けがありますよね」

「そうですね。もうそれは法律として施行されています。携帯の場合は、持ち主が使用者ですが、SNSの場合は実際にどのように取り締まれば良いのか、技術的な難しさがあります」

女性

「ここからが本論です ↓表紙は「六本松こころのクリニック」の提供です」

 「いいね」が脳を支配するメカニズム

「SNSが思春期の脳に影響」という衝撃的な記事を載せたのが『日経』(7.5日付)です最新の脳科学の研究でも読解力の低下を招いたり、思考や承認欲求をつかさどる「報酬系」への影響が出たりするなどの指摘がされています。ちなみに、「報酬系」というのは人間が心地よさや達成感、満足感を感じたときに活性化する、脳内の神経ネットワーク(回路)のことです。

人は他人から評価または賞賛された時に、脳の「報酬系」から「ドーパミン」という神経伝達物質が放出されます。その時に、「嬉しい」「気持ちいい」と感じ、脳が「この行動をもう一度繰り返す」ように命令します。これが学習やスポーツ競技の動機付けになるのですが、現実の生活に於てそのような場面が頻繁にある訳ではありません。ところが、SNSでは全ての人が発信者になれますので、良い投稿であれば、多くの人に「いいね」がもらえます。10代の思春期は「報酬系」が先行して急激に発達し、承認欲求が極めて強くなる時期です。そのため、「いいね」が欲しくて、SNSにのめり込む確率が大人よりも高いと言います。

思春期は現実の人間関係の中でアイデンティティを確立し、自分自身をつくっていくことが大事です。本来、そういう現実世界の中で本当の賞賛を得られるように努力すべきだし、結果がなかなか得られない中でも、現実社会では時間をかけて信頼や評価を築くことの大切さを学びます。そういった体験・経験が疎かになってしまいがちになります。そして、「ネット上での評価」に一喜一憂し、結果的に心理的なバランスを崩し、強い孤独感、不安、睡眠障害などを引き起こしやすくなるということだそうです。

(「日本経済新聞」)

 世界で進むSNS規制による青少年保護

「国立精神・神経医療研究センター(NCNP)などが取り組む調査でも、SNSの使用が思春期の女子の精神状態を悪化させる影響が見えてきた」そうです。そして東京都内の住民を対象にした調査の結果、SNS利用者では孤独感や痩身願望が有意に高いという結果が報告されています。なぜSNSがこれほど「痩せたい」という気持ちを増幅させてしまうのでしょうか。

かつてのテレビや雑誌の時代は「芸能人は別世界の人」と割り切れました。しかしSNSでは、自分と同世代の一般人やインフルエンサーが「痩せて可愛くなった姿」や「ダイエットの成功体験」を投稿し、そのような投稿に「いいね」や称賛コメントが集まります。それに対して二つの反応が出ます。一つは、自分も痩せて「いいね」を得ようと過度なダイエットに向かうケースです。もう一つは、それが上手くいかずに挫折し、孤独感や劣等感、敗北感を持ってしまうケースです

そのように青少年に悪影響を与えるということから、世界の各国では未成年者保護を強化している動きが広がっています。下の表は、それをまとめたものです。

オーストラリア 2025年に16歳未満のSNS利用を法律で禁止
イギリス 2027年に16歳未満のSNS利用を禁じる法律を導入する予定
インドネシア 今年の3月から16歳未満のSNS利用を段階的に制限する取り組みを始めた
フランス 15歳未満を対象としたSNS利用禁止法を2026年9月1日より施行する予定
カナダ 16歳未満のSNS利用を禁止する法案について、議会で審議中

(「SNS 思春期の脳に影響」『日経』2026.7.5日付)を基に作成

 

 規制だけでは解決しない――アイデンティティ教育の重要性

SNSはコミュニケーションを楽しむためのツールとして普及してきたものです。新しい文明の機器が社会の中に急速に普及すると、時には開発者が想定していなかったような過剰な反応が起こることがあります。米国心理学会が言っているように、SNSは本質的に「有益でも有害でもない」のです。包丁が料理にも凶器にもなるのと同じように、SNSも使い方によって価値が決まる道具です。要は使い手が、生活の向上や自身の啓蒙にとって有益に使えるように努力すれば良いだけのことです。

ただ、未成年については、判断能力が未熟ですので家庭や学校などで、様々なサポートが必要だと思います。まずは親権者が子どものスマートフォンやパソコン、ゲーム機などの利用を適切に管理・制限するための機能や仕組みを理解して、それを子どもに納得させた上で様々な機能を使うことです(「ペアレンタルコントロール」)。①利用時間・時間帯の制限:1日の合計利用時間を「1時間まで」と設定したり、夜間(例:夜22時〜朝6時)はスマホ自体や特定のアプリを強制的に使えなくしたりできます。②アプリの利用・ダウンロード制限:年齢に合わないSNS(例:17歳以上対象のものなど)の利用を禁止したり、新しいアプリを入れる際に親のスマホへ許可を求める通知が飛ぶように設定できます。③ウェブサイトの閲覧制限(フィルタリング)④課金・購入のブロック:アプリ内での課金やオンラインショップでの買い物を勝手にできないようにロックをかけます。

学校はSNSの危険性を教えるだけでは十分ではありません。子供たちが現実社会の中で自分の役割や能力を理解し、自分の居場所を見つけられるように支援することこそ、本来の教育の役割です。子供にとって一番重要なことは、自分自身を客観的に把握した上で、自分に見合った進路を見つけることです。「汝自身を知れ」とソクラテスは喝破しましたが、自分自身のことが一番分かりづらいのです。自分の特性が何なのか、その特性を生かすためにはどのような進路を取り、どのような学習をすれば良いのか、それを知ることが重要です。そこに学校教育の意義があります。成績を気にする人が多いのですが、まずは自分自身の個性・特性を発見し、アイデンティティを確立することが重要です。

そして、SNS時代だからこそ、自分の価値を「いいね」の数ではなく、自分自身の成長と現実社会での役割によって測れる人間を育てることが教育の使命であることを学校関係者は深く認識して欲しいと思っています。

(「バンダイナムコID」)

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