
「2024年度に大学の入学希望者総数が入学定員総数を初めて下回るという事態が起きました」

「大学全入時代の本格的な到来ということですね」

「えり好みしなければ、志望者は大学に入学できる時代になりました」

「今年の大学生の就職率は98%なので、とにかくどこかに入れれば、どこかの企業に就職できる時代だということですね」

「ある意味、結構な時代になったとも言えます」

「大学側からすると、受難の年に突入したということですね」

「そうですね、約6割の私大が定員割れとなりました」

「そういう中での私大「250校削減」案なんですね」

「こういうことは目に見えていたのに、平成初期に18歳人口がピークを迎えていたにも関わらず、大学の数を増やし続けたのです」

「それは何故ですか?」

「文科省が大学の数を増やし続けた背景には、官僚たちの退職後の行き先を確保する「利権構造」がありました。私立大学の新設や、短大から4年制大学への改組を文科省が「許認可」する際、その見返りや審査をスムーズにする名目で、文科省の退職官僚がその大学の「理事長」「学長」「事務局長」などのポストに迎え入れられるケースが横行したのです」

「そういう“からくり”があったのですね。ここからが本論です ↓ 表紙は「note」提供です」
私大増設の背景にあった規制緩和と天下り問題
2人が話題にしていた、私大「250校削減」案は先の4月25日の財政制度等審議会(財務省の諮問機関)において数値目標として示されたものです。しかし、このことについて、責任官庁である文科省の事前同意を得ていませんでした。助成金など、大学政策をめぐって30年以上にわたって財務省と文科省の対立が根底にあるのです。その辺りの歴史を辿ってみることにします。
文科省は1991年(平成3年)に「大学設置基準」を大幅に緩和しました。これが大学数急増の引き金となります。「大学の個性化・多様化を促進する改革」という大義名分でしたが、実態は「誰でも、どんな組織でも簡単に大学を作れる・変えられる」ようにする規制緩和でした。これにより大学設置のハードルが大きく下がり、地方の短期大学や専門学校がこぞって4年制大学へと衣替えをしました。
しかし、その後、2017年に文科省の組織的な天下り先確保のためのあっせん問題が発覚します。国家公務員法に基づく「再就職等監視委員会」の調査により、退職したキャリア官僚を私立大学等にあっせんしていた実態が暴かれました。この違法行為が認定され、前川次官は引責辞任(依願退職)します。その後、歴代の事務次官や幹部ら合計43人が減給や戒告などの厳重な懲戒処分を受け、省全体が機能不全に陥る大スキャンダルとなった事件です。
要するに、「大学の質を高めるための認可」ではなく、「自分たちの退職後の席を作るための認可」を行っていたという決定的な証拠が明らかになり、学生急減期を前に大学数を増やしたミステリーの謎がこれで解けたことになったのです。この問題が文科行政への不信感を高めたことは間違いないでしょう。

(「テレ朝MEWS-テレビ朝日」)
定員割れ私大が抱える構造的な経営危機
日本私立学校振興・共済事業団などの調査によると、全国の私立大学の約6割が募集定員を下回る「定員割れ」の状態にあります。18歳人口の急激な減少に対し、大学の数を増やしすぎた(全国で800校以上)ことが原因です。
定員割れが続く大学には、国からの「私学助成金(補助金)」が減額または全額カットされる仕組みになっています。特に定員充足率の80%割れが続くと、学生が国の「修学支援新制度」(授業料免除や給付型奨学金)を受けられなくなります。こうなると受験生から完全に敬遠されるようになります。そして、「定員割れペナルティ」として補助金が段階的に減額されるのですが、充足率が50%(または40%など条件による)を割ると、在籍学生がどれだけ残っていても補助金は全額カット(0円)になります。
日本私立学校振興・共済事業団のデータによれば、全国の私立大学を平均すると、国から大学に支給される助成金は学生1人当たり年間約14万円です。ただし、これはあくまでも平均値なので、理系・医歯薬系の学生は高めに設定され、文系学部の学生は低めになっています。現在、多くの私立大学は学生確保と経営維持の狭間で苦しい判断を迫られており、大学再編の議論が避けられない状況になっています。

(「毎日新聞」)
「250校削減案」が映し出す財務省と文科省の対立
先に紹介した「2040年までに私立大学を250校程度(約4割)削減する」という財務省の数値目標は、財務省による単独の奇襲提起とも言えます。これまでの「文科省 vs 財務省」の主導権争いが、私立大学の存廃問題という形で最も過激に表面化した瞬間と言えます。
財務省からすれば、文科省がこれまで進めてきた定員管理の厳格化などの政策は「生ぬるい」と映っています。少子化が加速する中で、定員割れの私大に年間約3,000億円の私学助成金(税金)が投入され続けている現状を問題視しています。そして一部の大学で「四則演算やbe動詞などの義務教育レベルの授業」が行われている実態を資料で示し、「これ以上、文科省のペースに付き合っていたら財政が持たない」として、「250校削減」というショック療法的な数字を叩きつけたのです。
この唐突な提起に対し、文科省は「規模の適正化(縮小)の必要性は理解するが、定員割れの事実だけで機械的に判断すべきではない」と猛反発しています。文科省(松本洋平文科相)の主張は以下の通りです。①地方の私大を機械的に潰せば、その地域の医療・福祉・地場産業を支える人材(看護師や保育士、DX人材など)が完全に枯渇する。②「入口」ではなく「出口」で見るべき。入学時に四則演算の復習が必要だとしても、大学の4年間で手厚く教育し、社会に役立つ人材として卒業(出口)させていれば、その大学の存在価値はあると言います。
政府全体として「大学の数を減らす方向性」では一致しているものの、「250校」という具体的な削減数やその手法について、文科省は一切合意していません。にも関わらず、今回財務省が一方的に示した削減案は、ある意味文科省側に対する「宣戦布告」と言えるかもしれません。
いずれにしてもこの問題は、地方私大は地域インフラなのか、それとも市場原理で淘汰されるべきなのか、AI時代に800校もの大学が本当に必要なのか、21世紀に見合った大学教育とは何か、といった問題に発展せざるを得ない重大な問題だと思います。

(「フィナンシャルアカデミー」)
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