
「この前、社内で「ストックオプション」についての説明会があったのですが、何のためにそういうことをするのか、よく分かりませんでした」

「あなたが勤めている会社の株式を購入できる制度のことです。」

「仮に購入したとしても、その購入価格から下がることがありますよね」

「株価というものは変動しますからね。上がる時もあれば、その逆もあります」

「あと、会社が指定する証券会社に口座を開設しなければいけないのと、2年間は売ってはいけないそうです」

「そういうこともあって迷っているのですね。お宅の会社は時流に乗った業種だと思いますので、前向きに検討されたらどうですか?」

「そうですね。ところで、今のような株高はしばらくは続くでしょうか?」

「どうでしょうか。上がるピッチが早過ぎると思っていますが、ただ、半導体、AI関連の市場はこれから拡大していきます。それを見越しての動きだと思います。総ての株価が上がるのではなく2極化が進むと思っていますが、この流れはしばらく続くと思っています」

「日本に投資の資金が今後も入ってくるでしょうか?」

「実は、「ストックオプション」の導入や「コーポレートガバナンス・コード」の策定など、「陰の努力」が現在の株高に繋がったと見ています」

「そうなんですね。ここからが本論です ↓ 表紙は「note」の提供です」
ストックオプションは「挑戦する組織」をつくる仕組み
ストックオプション制度は、1997年の商法改正を機に導入されたものです。あらかじめ定められた価格(権利行使価格)で将来会社の株式を購入できる権利を従業員などに付与する制度です。ストックオプションは、未上場企業でも行うことができますので、これから上場を目指すスタートアップ企業やベンチャー企業で活発に導入されています。未上場で、まだ株価が安いうちに低い価格で社員に株式を付与できるため、将来「IPO」(新規株式公開)した際に、従業員に値上がり益をプレゼントできる可能性が高くなります。
会社法上、付与対象に制限はないため、契約社員、派遣社員、パート・アルバイトなどの非正規雇用の従業員にも付与できます。貢献度や責任の重さに応じて、正社員を中心に付与する企業が多いですが、会社が戦力として考えている優秀なパート社員や長期の契約社員に付与するケースもあるとのことです。
株価が上がるほど自身の利益も増えるため、従業員が一丸となって業績向上を目指すようになり、組織としての一体感も生まれるようになります。スタートアップ企業やベンチャー企業など、現時点では高い給与を支払うのが難しくても、将来の大きなリターン(キャピタルゲイン)を期待させることによって、優秀な人材を確保し続けることもできるのです。しかし逆に、株価が権利行使価格を下回ると権利の価値がなくなるため、モチベーションが低下する危険性もあります。ただ、そのような緊張感のもと、全社一体となって業績向上に向けて取り組むため、新しい事業や技術につながるアイデアが生まれる可能性が高くなります。ストックオプション制度は全社的にインセンティブを与える良いシステムだと思います。

(「三井住友カード」)
コーポレートガバナンス・コード誕生の背景
2015年にコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を金融庁と東京証券取引所(東証)が共同で策定しました。このコードの目的は、企業の不祥事を防ぎ、不透明な経営をなくし、国内外の投資家から「信頼して投資できる株式市場」と評価される環境を作ることだったのです。コーポレートガバナンス・コードは、以下の5つの柱(基本原則)を中心に構成されています。
①株主の権利・平等の確保
②株主以外のステークホルダーとの適切な協働
③適切な情報開示と透明性の確保
④取締役会等の責務
⑤株主との対話
極めて常識的な内容になっていますが、これを策定しなければいけないような不祥事が続発していたのです。2015年にCGコードが導入される以前の日本企業の経営トップによる大型の不祥事としては以下のものがあります。
・オリンパス事件(2011年):1,000億円以上の損失を10年以上にわたり組織的に隠蔽。
・大王製紙事件(2011年):創業家3代目の社長が、子会社から約106億円を個人的に借金してカジノ等に流用。
・東芝の不正会計問題(2015年):経営陣が「チャレンジ」と称して過大な利益目標を迫り、組織的な利益の水増しを継続。
これらの不祥事に共通していたのは、「社内の身内だけで経営を決め、誰もトップに物言えぬ閉鎖的な環境(ガバナンスの欠如)」でした。このため、海外の機関投資家から「日本企業は中身がブラックボックスで怖くて投資できない」という激しい批判が起き、日本の株式市場全体が敬遠される原因になっていたのです。
日本企業は長年、メインバンクや取引先同士で株を持ち合い、お互いの経営に口出ししない「なあなあ」の文化で成り立っていました。「経営を身内だけで監視するのは無理がある」という常識をシステム化するため、コードを通じて「独立した社外取締役を一定以上入れること」を強く促しました。これにより、東芝やオリンパスのような「社長の暴走」にブレーキをかけられる態勢が整ったのです。しかし一方で、企業統治を重視するあまり、「挑戦する経営」が弱まるのではないかという懸念が生まれることになります。

(「朝日新聞」)
海外投資家を呼び込むためのガバナンス改革
当時の安倍政権は、日本経済を復活させるために「海外の投資家から日本にお金を呼び込むこと」を最重要視していました。「なれ合い経営」が横行していると思われているようでは、海外投資家は日本市場に資金を投じようとはしません。そこで、世界に通用する共通のルール(コード)を東証に作らせることで、「日本市場はクリアで、投資する価値がある場所だ」とアピールするパスポートとしたのです。
コーポレートガバナンス・コード(CGコード)の策定は、金融庁単独の独断ではなく、当時の安倍政権が掲げたアベノミクスの「成長戦略」が最大のきっかけ(発案の源流)だったのです。CGコードの内容自体は、極めて常識的なことばかりです。しかし、それらを敢えて文字にして世界に宣言しなければいけない位の危機感を当時の政権は持っていたということです。
CGコード自体は法律ではないため、破っても逮捕されるような罰則はありません。しかし、東証の「上場規則」によって、企業は「コードを守るか、守らないならその理由を説明(開示)しなければならない」と義務付けられています。中には、「社外取締役を増やすよりも、業界を熟知した創業社長が迅速に決断したほうが成長できる」という経営判断から、ある特定項目について遵守しないことを宣言する企業もあるとのことです。それでも、構わないということです。
CGコードはあくまでも指針ですが、完全に無視をして必要な報告を怠ると、最悪の場合は東証から上場廃止などの厳しいペナルティを受ける可能性もありますので、それなりに守る必要があります。そんなことから、多くの企業は遵守しているような状況だと思われます。不祥事は減ったというメリットはあったかもしれませんが、CGコード導入を機に経営が内側に向くようになったと思われます。その結果、企業は「失敗しない経営」を重視する傾向を強め、自社株買いや内部留保の積み増しが進みました。守りのガバナンスも大切ですが、より大事なのは攻めのガバナンスです。企業の存在価値は、いかに多くのイノベーションを創造するかにかかっているからです。
次回はその辺りのことについて書きたいと思います。このブログは週3回(火・木・土)の発信ですが、都合により次回の7日(火)は夜遅くの発信になります。予めご了承ください。

(「x.com」)
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